元日以来の2021年第一週です。Jack Johnson(2006年)を除いてすべて2010年代から選びました。
- Vulpeck. Darwin Derby. 2018
- DADARAY. 優しく鬼に. 2017.
- フィロソフィーのダンス. ライク・ア・ゾンビ(album ver). 2017.
- Jack Johnson. Upside Down. 2006.
- ポセイドン・石川. あんたがたどこさ. 2018.
- Moonchid. Run Away. 2017
今回からはTwitterの発言をそのまま転記してゆきます。
(以下、同日夕刻のTwitter連投の改稿版です)
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いやーほんと寒くて参りますね今日は。ファンクだけで温まるには限界があるかもしれませんね実際。なんなら踊りながら聴いてください。新年最初の新しめファンク特集です。まずVulfpeckから。
01. Vulpeck. Darwin Derby. 2018.
Vulfpeck(ヴルフペック)は、2011年から活動している現代ファンクバンド(ドイツ風だけどアメリカのバンド)。海外の潮流では言われないんですが、日本固有の音楽批評文脈ではしばしば「ミニマルファンク」の旗手として言及されるようです。
“minimal funk”という語彙自体は日本以外でもなくはないようなんですが、ヴルフペックを「ミニマルファンクの」と紹介する文脈はどうも日本だけらしい。どうしてそうなったのかは気になるところですが、それはさておきVulfpeckの音は新しい。なんだか久々に古典的でない、それでいていてここ半世紀のファンクミュージックの蓄積の巌〔いわお〕の上にズシッと乗っかった、泰然とした気風がありますね。
2020-2021年現在でファンクらしいものを探そうとすると、EDM/Neo Soulの、どちらかといえば従属要素に隠れてたり、HIPHOPのサンプリングやオマージュの元になってたり、ということが多いんですが(そういうのも自分は好きなんですが!)、そうではないタイプの現代ファンクがここにあるなと。
ただ一方で、こないだ Suchmos について語った時にも少し触れたんですが、「ファンクってこれからもどんどん新しくなくちゃいけないの?」ということを、Vulfpeckの良さを褒めるときに同時に突きつけられるような思いもあります。むしろファンクは、Vulfpeckみたいな例外を除いて、むしろ(ミクスチャを繰り返しながら)伝統芸能化していく流れにありそうなんですよね。「それがいい/それでいい」という立場と、「明確に新しいファンクを褒める」という立場は、激烈に対立するとまで言わないとでも、完全には重ならないのでは、と。
(a)ファンクを(半ば既にそうであるように)伝統芸能、洗練された固定の様式美として褒めた方がいいのか、
(b) ファンクを「(時に停滞がありながらも、長期的には)自己革新を繰り返すジャンル」としてその世界各地のイノベーションに着目して褒めた方がいいのか、
このどちらが良いのか、ぶっちゃけ私は迷ってます。そういう気持ちを突きつけられるから、ぼんやりとでも #FalettinSouls なんてマラソン企画をやりたくなったのかな、と今は思います。
Vulfpeckだけでめちゃめちゃ長く語ってしまった。
02. DADARAY. 優しく鬼に. 2017.
休日課長・REIS・えつこ の3ピースバンドです。川谷絵音が実質的な作詞作曲を手がける、比較的新しめのプロジェクトです(休日課長と川谷絵音はゲスの極み乙女の仲間でもある)。川谷絵音Pというにはそこまで川谷さんの采配が強いかはよくわからないのですが、川谷さんと、それを演奏する休日課長のR&B的な咀嚼とが見えやすいプロジェクトであるとは思います。ゲス極を聴き込んでる人は違いを楽しく聞けるかもしれないですね(自分はゲス極あまり聴けてない)。
ところでこの曲、歌詞の解釈がうまくいかない。「泣かない私は強い」と「泣かせないあなたも強いはずなのに何か怖い」が連なってる。直感的に「モラハラの予感か何か?」とも思うけど、そう単純ではないようにも思う。日本語文として一応意味は通ってるのに、解釈が定まらない、面白い歌詞ですね。
03. フィロソフィーのダンス. ライク・ア・ゾンビ(album ver). 2017.
これは以前 @ffi さんに「#falettinsouls がファンクとソウルを紹介するなら、フィロソフィーのダンスはどうなの?」と言われてから暫く選曲してた結果出たチョイスです。私、アイドルに疎いので……。
フィロソフィーのダンスは、2015年結成の「ファンクアイドルグループ」。最初から(R&Bでなく、敢えて)ファンクを軸にするアイドルは、日本国内ではだいぶ珍しいですね。たぶんプロデューサの加茂啓太郎さんの采配が大きいのではないでしょうか。
プロデューサの加茂さんがメンバーの4人と一緒に受けている2017年インタビューがあるんですが ( https://realsound.jp/2017/01/post-11088.html )、2017年段階ですでに加茂さんは面白い。
「メンバーはApple Musicに強制加入」
「ブルーノ・マーズは良さがわかるまで聴いとけ」(2020-12-21回参照)
「コンセプトのFunky but Chicは(ナイル・ロジャーズの)Chicから」(2020-12-08回参照)
「コモンセンスバスターズは完全にカーティス・メイフィールド」(2020-12-09回参照)
もう加茂さんと握手したいよね!!!
加茂さん的には、メンバーにファンクを勉強してほしいのでしょうか?
宗像明将(聞き手). 2017.01.25, 15:00.『フィロソフィーのダンス 1stワンマン・ライブDVD制作プロジェクト』インタビュー:フィロソフィーのダンス、メンバー&プロデューサー加茂啓太郎インタビュー「他のクラスタに反応してもらえるアイドルに」https://realsound.jp/2017/01/post-11088.html
加茂:んー、勉強してほしいですね。知っておいて損はないじゃないですか。歌の解釈も広がりますしね。
という感じで、メンバーの1人の日向さんもSuchmos,SANABAGUN,Awesome City Club,LUCKY TAPES などを聴く(聴かされる)と。
ただ自分は、特性なのか気質なのかわかりませんが、未だに「アイドルの歌う楽曲」とどう接していいかわからない。なのでハマるところまで行けてないですね。ただ、フィロソフィーのダンス(略称「フィロのス」らしい)は、今後も売れて、日本および極東における「ファンク」の定義をむしろアイドルソング側から拡張していって欲しいですね。たぶん、このまま活動続けていった結果、メタル界におけるBABYMETALみたいな独特の存在感を獲得できたりしそうな、そんな気もします。昨年残念ながら、ファンキーな曲も独特の雰囲気で歌えたオルタナロック・アイドルグループ「sora tob sakana」(照井順政P)が解散してしまったので、余計に(2020-11-28回参照)。
04. Jack Johnson. Upside Down. 2006.
2006年なのでそこまで新しくはないんですが、結構重要なプレイヤーなので紹介しました。昨年末にG. Love & Special Sauce を紹介しましたが(2020-12-28回)、そのGラヴが熱烈に業界に引き入れたハワイ州の才人です。
エース級サーファーとしてのキャリアを大怪我で折られた後にギターにのめり込み、ある日ギターの才能を見出されて全米一位を連発するアコースティックギタリストとして羽ばたく。いつかこれ絶対伝記映画になるでしょお。俺が死ぬまでに誰か撮ってよ、ハワイ好きの映画監督が。
05. ポセイドン・石川. あんたがたどこさ. 2018.
2017年から本格的に曲をリリースし始めたということ以外あんまり情報が取れなかった人です……。Wikipediaをみても、中立性をイマイチ欠く「とにかく山下達郎リスペークト!」しか書いてない(しかも、そこのWikipedianがいうほど達郎ではない)
ただとにかく曲のクオリティは面白いし、よいですね。誰でも知ってる「あんたがたどこさ」をブルース歌謡的なファンクに変換するやり口は、泉谷しげる「ゲゲゲの鬼太郎」(第4期アニメOP版,Spotifyに音源なし)を彷彿とさせるものがあります。
ポセイドン・石川さんのいい資料あったら教えて下さい。
06. Moonchid. Run Away. 2017
ネオソウル圏の中心のひとつとされるMoonchildから。ネオソウルというのは、ダニー・ハサウェイやスティービーワンダーの70s “New Soul”(2020-12-29回を参照)ではなく、アシッドジャズより後にUKその他で立ち上がった、国をまたいだソウル再解釈運動、Neo Soulです(Neo Soul ≠ New Soul)。
またネオソウルも一回限りのものではなくて、ディアンジェロ(2020-12-16 プリンス特集回)が颯爽登場した頃を第一世代、そしてコリーヌ・ベイリー・レイ(2020-12-21回)や、このムーンチャイルドが活躍する00年代後半から2010s全時期を跨いで、そこそこ長めの第二世代ネオソウルと区分する見方もあるようです。
特に第二世代ネオソウルは、同時にヒップホップやEDM各種とも複雑に絡み合い集合離散を繰り返していて、まだまだ不勉強な自分が総括できるわけもないのですが、とりあえず初期ディアンジェロとムーンチャイルドを聴き比べてみると、楽しいかもしれませんね。
今日はこれでおしまい。明日は「ボーカロイドのファンク」です。