#FalettinSouls 2021-01-15 Tower of Power

おはようございます。この #FalettinSouls の選曲はだいたい前の週の入眠失敗時とかに作られています。ゆうべ作った来週ぶんもだいたいそうです。儀式めいてますね。さあ金曜は単一ユニットに焦点を当てる日です。
今日はTower of Power 特集! 本人らの音源5つと、邦楽オマージュ曲2つの計7つでお送りします(最初が短すぎるためいつもの6曲より+1ぶん多い)

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  1. Tower of Power. Oakland Stroke – Additional. 1975.
  2. Tower of Power. What’s Hip? 1973.
  3. Tower of Power. Only so much Oil in the Ground. 1975.
  4. Tower of Power. On the Serious Side. 1975.
  5. 菅野よう子. GET9. 2004.
  6. スガシカオ. バナナの国の黄色い戦争. 2008.
  7. Tower of Power. Look in my Eyes. 2020.

01. Tower of Power. Oakland Stroke – Additional. 1975.

タワーオブパワーのファンク様式は時に「ベイエリア・ファンク」「オークランド・ファンク」とも呼ばれます。しかし、TOPに関しては「1グループ1ジャンル」とも言われるほど独特なファンクを、この半世紀続けてます。

そのタワーオブパワーの作法を語る際に引き合いに出されるのが、このアルバム”Back to Oakland” の初めと終わりに収録された”Oakland Stroke”です。載せたのは終わりの方の、少しだけ長いほう。それでもたったの1分44秒です。これは何か?

デビッド・ガリバルディというTOPの名物ドラマーが、ドラムの基礎練であるところのルーディメンツを演ってる最中に思いついたリズムに基づいて収録したもの、とされています。本人の証言や譜面も残されている。

前半は曲を作った時のエピソード。要約すると、Oakland Strokeのルーディメントはリハーサルの合間にRemoのドラムパッドなどで遊んだりジャムセッションをしていて思い浮かんだとのこと。(…)その頃はまだ、2分音符、4分音符を使わないリズムの曲。What is hip? や Soul Vaccination などの伝統的なファンク以外の曲を演っていなかったときで、アルバムに入れる曲が足りないから何かないかといわれ、遊んでいたときに思い浮かんだリズムをもとに仕上げていったそうだ。

Sweet Soil Music. 2019.「1970s Tower Of Power 名曲 おすすめ ドラム David Garibaldi」 https://sweetsoilmusic.com/tower-of-power-drummers-david-garibaldi-notes/ , 2021.01.20取得)

そしてTOPのファンクとして特異なところは、ドラム以外もある。第二のTOPぽさは、ベースのアプローチ。ラリー・グラハムなどが広めたようなハネハネのスラップベース(チョッパーベース)にゆかない、ハネずに16分音符を埋め尽くすようなベース演奏が特徴です。これはロッコことフランシス・プレスティアの技ですね。

特に代表曲である2曲目の『What is hip』で顕著なのであるが、独特のポコポコとしたハーフミュートでひたすら16分を敷き詰めたライン。その中で上下左右に動きまくるフレーズ展開こそロッコの名刺がわりと言える代表的なスタイルだ。そう、これこそが当時誰もが参考にした有名なスタイルというわけ。

藤川経雄. 2018. 「独自の解釈で白人ファンクを追求! 伝説の《超個性派ベース》“ロッコ”プレスティア」『Redbull Music』https://www.redbull.com/jp-ja/rocco-prestia ,2021.01.20取得

第三に、ホーンセクションの取り回し。JB以降のファンクスタンダードにホーンセクションは欠かせませんが、TOPのホーンは他のファンクバンドとも鳴らし方が違う。メロディラインとリズムループのフィルイン部分、その両方を掻っ攫うような吹き方をするんですね。TOPではブラスがウワモノ、主役なんです。

従って、TOPはファンクバンドとして概ね分析できつつも、「ブラスロック(管楽ロック)」としても鑑賞に堪える懐の広さを持ち合わせるバンドでありました。カリフォルニア州オークランドでずっと看板を守り続けるだけの一国一城一ファンク(?)になるだけの要素が、70s中盤には揃ってたんですねー。

オークランドファンクの真髄がこの Oakland Stroke に求められがちなのも、「TOPってオーセンティックなファンクからもちょっとはみ出してない?」という感じから、そしてそれを裏付ける distinctive な奏法の組み合わせから、香ってきてるのかもしれないですね。なぜ2分弱しかないのか。

02. Tower of Power. What’s Hip? 1973.

70s黄金期の、特にファンク色の強い代表曲として挙げられる定番のようですね(再確認したらそんな扱いでした)。けれどTOPの、このベースとドラムスが「16分の音空間を埋め尽くすファンク」であることにご注目ください。

ファンク音楽や、広義の「ブラックミュージック」は、時にグルーヴを創出するために音数を減らすことに注力することがあるんですよね。(プリンスやディアンジェロ、星野源について語った時に私もそんな褒めのアプローチを採用しました)。けれどTOPの譜面はみちみちなんです。

古典ファンクの流儀から逸脱してみちみちに16ビートを埋め尽くしてるのに、その刻みが古典ファンクに劣らず固有のグルーヴを帯びてるという、逆説めいた演奏を実現しているのが、数あるファンクバンドの中でもタワーオブパワーが特異な、そしていつまでも殿堂に君臨し続ける秘密になっています。

03. Tower of Power. Only so much Oil in the Ground. 1975.

オーセンティックファンクよりもBPMがかなり上がってることにお気づきでしょうか。このBPMに関する融通無碍な挑戦もTOPのユニークさに数えられます。歌としては石油資源の枯渇に警鐘を鳴らす内容です。

この連投中にリアタイでびじうさんから「これがのちのジャミロクワイに?」と呟いてくれてますが、そうかもしれません。アシッドジャズでBPMが上がる時、そこで参照されてるのはJBのミドルテンポではなくてTOPのハイテンポ・ファンクかもしれない。当時の英国クラブでのTOPの扱いはどうだったかしらん。一応英国80sクラブカルチャーについて論じてる本(『UKジャズダンスヒストリー』2009年邦訳)もあるけど、未読です。(2021年01月現在)

04. Tower of Power. On the Serious Side. 1975.

これは特に何も考えず選びました。他の時代(90sなど)から選びたかったんだけど、つい黄金時代に引き摺られた形ですね。

05. 菅野よう子. GET9. 2004.

はい、ここから邦楽が2曲続きます。#FalettinSouls を初回からお聴きの方は覚えてらっしゃいますでしょうか、「てつ100%」のことを……あのオークランドファンクの熱烈なフォロワーバンドのことを……。

タワーオブパワーのファンクマナーを踏襲したてつ100%の編曲を多く務めていたのが、後に「アニメサントラの女王」となる菅野よう子でした。このGET9は、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』地上波版OPのために書き下ろされたhiphop寄りロックです。が、後ろのホーンにはTOPの痕跡が!

さらには要所要所に、P-FUNKないしジャネットのリズムネイションめいたフレーズも……菅野よう子の手慣れた切り札で撃ち込まれた渾身のブラスロック/プラスファンクとして聴けるわけですね。

……え、菅野よう子はビバップだからジャズ畑じゃないのって? こんな音楽評論的分析があります。ジャズからソロを省いて「手短なブラスサウンドとして纏める」方に菅野よう子の音楽的快楽があるのだ、という分析です。本人インタビューを元に、小室敬幸さんが論じたものです。

つまり、純粋なジャズというよりも、ブラス(金管)とファンク要素の強いフュージョン、もしくはファンク色のあるブラスロックのようなものとして作曲者自身は自認しているのだろう。監督の渡辺が本作の原型としてイメージしていたドラマ『探偵物語』(1979年から1980年まで日本テレビ系列で放送)のオープニングテーマ“Bad City”がファンク色のあるブラス・ロック(+ディスコ色が強いのがちょっと違うけども……)であることを鑑みると、腑に落ちるはずだ。

小室敬幸. 2020 (2020年08月). 「『カウボーイビバップ』のサントラと、優れた音楽演出 」『ミュージックガイドマガジン by Spotify&CINRA』https://kompass.cinra.net/article/202008-cowboybebop_kngsh , 2021.01.20取得)

私も基本的に、この文脈での菅野よう子評価に同意です。菅野よう子さんは、てつ100時代から一貫して「管楽のカッコよさ」をよくよく知っていて、それをいつでも武器として取り出せるトラックメイカーだからたまたまジャズっぽいこともできるのであり、軸足はむしろブラスロック、ブラスファンクの方にある。

この話を前提として『カウボーイビバップ』サントラ3部作や、その他の菅野よう子楽曲を聴き直すととても面白い話が色々できるかと思います。ぜひ「TOPからのてつ100、かーらーの、GET9」という文脈聴きをお楽しみください!

06. スガシカオ. バナナの国の黄色い戦争. 2008.

おそらく2008年当時、これ以上の座組みで「日本人によるオークランドファンクの再現は望みえなかっただろう」という面子で一発どりされた楽曲です。もはやスガシカオはこの座組を引き寄せた人間としてここに居る、みたいな。

この収録に参加した演奏家一覧はのちほどアルバムのブックレットを読みなおしてブログ欄で書いておきますが【注:2021-01-19現在、作成中】、いやこれよく実現できたなと思います。自分はスガシカオについては贔屓目で見がちですが、日本で試みられたTOPオマージュでこれを超えるスタジオ録音はこの時以来まだ多分ない。金字塔です。

それでもこう、ドラムスやベースの癖が、黄金期のTOPとはだいぶ違うので、なんか流儀があるんでしょうね。日米TOPマナーの比較としても長く気にしてゆきたい楽曲です、バナナの国の黄色い戦争。ところでこの曲聴いてると昨今の米議会襲撃のことを考えてしまいますね……。

  1. Tower of Power. Look in my Eyes. 2020.

ちょっとねえ、TOPの新作アルバム2020年に!? マジで!? いやファンクバンドって長生きしてくれたら半世紀続くんですね……メンバー交代ありつつ、TOPのいいところが秘伝のタレとして引き継がれてますよ……。

ベーシストのロッコは惜しくもこの2020年の後半に亡くなられてしまいましたが、この今のTOPなら「TOPらしさとは何か」を考えながら、今後もオークランドファンクの真髄を伝え続けてくれるのではないでしょうか。

ファンクバンド、こういう家元制度みたいになってる凄腕集団が全然生き続けてるのが、わりと特殊ですね。おじいさんファンク、おばあさんファンクと、そこに参入する若手のファンク、そして老若男女シャッフルされる座組のファンク、それらすべてをくまなく聴いてゆきたいですね……。

というわけで金曜日のタワーオブパワー/オークランドファンク特集でした。土曜日と日曜日は(リクエスト貰ってるけど来週以降までキープして)おやすみです。続きは01/18月曜日。すでに木曜日まで選んでupはしてますが、当日まで練っておきます。

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