#FalettinSouls s2eX09: Lachy Doley

: Lochy Doley

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The Lachy Doley Group. Frankly My Dear I Don’t Give a Damn. 2015.
Lachy Doley. No Key Left Unbroken. 2020.
Lachy Doley. VooDoo Child (Slight Return). 2021. (orig: Jimi Hendrix 1968)
Lachy Doley. Only Cure for the Blues Is the Blues. 2021.
Lachy Doley. I’m a Man. 2021.
Lachy Doley and Clayton Doley. Right Time. 2021.

【2021-10-18 夕】

FalettinSouls 3週間前(2021-10-01)にリリースだけして、解説してこなかったs2eX09のことをいい加減やっつけようと思います。

今回は、いつもの6曲紹介ではストーリーを作りづらいので、語りおろしでゆきます。

Lachy Doley とは何者か? とりあえず、後で曲としても紹介しますが、前知識抜きでこの動画を見ていただけますでしょうか。

オーストラリアのキーボード&オルガン演奏者である Lachy Doley の演奏の凄さがわかりやすいのは、この動画でしょう。1968年のジミ・ヘンドリクスの代表曲 “Voodoo Child (Slight Return)” を、なんとワーミー・クラビネット[1]The Chicago Electric Piano Co. Whammy Clavinet: The Funkiest way to Funk up your Funky Funk. https://chicagoelectricpiano.com/clavinet/whammy-clavinet/ (2021-11-14 accessed). で完全再現しているんですよね。

クラビネットといえば、スティービー・ワンダーが自作に大胆に取り入れたことで「スティービー・ワンダーっぽい、70年代ニューソウルっぽい鍵盤」と覚えている人が(私含めて)多いと思います。しかし Lachy Doley は、もうなんかそういう懐メロ的な領域を踏み越えた弾きこなしをしてますよね。Lachy がフロントで鍵盤を弾きながら長い棒をガツガツ振ってるのが、このワーミークラビネットです。

私はたまたまこのロッキー・ドリー(或いはラッキー・ドリー。本人的にはlockと同じ発音だと仰ってます)の演奏動画をみて「こんな凄いオルガン&クラビ演奏家がいたの!?」と飛び上がってしまいました。プロの鍵盤演奏家のakiraさんからも「いいよね彼」とコメント貰いました。

ですが、単に「演奏してみた」パワーがあるよ、という単純な話でもないんですよね。Lachy Doley (& his Group) の魅力は、「現代でブルースロック/ブルージーファンクを演る」ことへのこだわりに焦点が合っていることだと思います。特にTrack 4「ブルースだけがブルースを癒してくれる」など、白眉です。

Beatles以降のロックではなく、ロックがまだ”Rockn’Roll” だったころの、ブルースとロックの乖離がまだそこまででもなかった頃の60年代以前のロック(ブルースロック)を射抜いたサウンドを鳴らしてますよね。以前特集したブルースブラザーズや、日本でもTHE BAWDIESなどがそのルーツを大事にしてる。

ブルース/ゴスペル/ジャズあたりから、色々あってロックが生まれ、(商業音楽としての)ソウルが生まれ、そして16ビート&シングルコード進行のファンクが生まれました。この3つはだいたいどれも1950-60sあたりにかけて、北米において発生したものです。
その中でも、ブルースはその3ジャンルのどのなかからも、先祖返り的に鳴ってくる音ではあるんです。しかし、1970s以降の”Rock”化したロックでは、直接的にはなかなか鳴ってこない、忘れ去られがちな音でもある。そんな事情もあり、ブルースを大事にしてるバンドは、一聴して目立ちます。

もうひとつ気になるのは、Lachy Doley (Group) がオーストラリアで活躍するバンドであることです。オーストラリアといえば、先週のs2e23で紹介したハイエイタス・カイヨーテも、世界中の音楽ファンの耳目を集めるオーストラリア・メルボルンのバンドです。
オーストラリア、実はR&B耳にとって今凄いのでは? と、熱心に音楽を聞き直してるうちに自分はやっと気づけているわけですが。ハイエイタス・カイヨーテやLachy Doleyの活躍の舞台となってる現代オーストラリアの音楽シーンって、いまどういう力場になってるんでしょうね? 今それが気になってます。

私今回取り上げた6曲の中で、私はとりわけTr.06 “Right Time”が推しです。スガシカオのバックで名演奏を繰り広げてきた面々(田中義人、森俊之、松原秀樹など)が集う日本のインストバンド「C.C.King」が大事に護っている音と似た音が鳴ってます。そう、これぞ良質な Bluesy Funk ですよ!

というわけで、Lachy Doley の紹介でした。Lachyさんは公式アカウント @LachyDoley をお持ちで、なぜか日本語でも最新情報をツイートしてくれています。皆さんフォローして新展開を待ちましょう。そしてサブスクでLachy Doley (Group) の音源を聴きましょうね〜。

次回特集回 s2eX10 は、2000年代から絶品日本語ファンクを出し続けてきたシンガーソングライター、森広隆を特集します。もう音源は出してるので、先に聴いておいてください。金曜までに書きます。

▼Lachy Doley の日本語発音について

直接尋ねて返答をいただけたので、載せておきます。

――Lachyに最も近い綴りは以下のどれですか?

Lachy Doley: LOCKYと発音します。日本語では(L)にあたる綴りがありません。もっと良い綴りがあったら教えてください 🙂

(上記ツイートの翻訳)

脚注一覧

脚注一覧
1The Chicago Electric Piano Co. Whammy Clavinet: The Funkiest way to Funk up your Funky Funk. https://chicagoelectricpiano.com/clavinet/whammy-clavinet/ (2021-11-14 accessed).