1. 森広隆. ネオフィリア. 2017.
2. 森広隆. ショートケーキ. 2002.
3. 森広隆. Bomber. 2002. (orig: 山下達郎 1978)
4. 森広隆. 2D Star. 2017.
5. 森広隆. Rainbow Seeker. 2004.
6. 森広隆. Funk Redemption. 2009.
【2021-10-22 朝】
FalettinSouls s2eX10: 森広隆 の6曲はすでに公開済みです。ここから聴いてください。解説は今日か明日。
【同日 夕】
今日は帰りながら森広隆特集もやっちゃう。
1. 森広隆. ネオフィリア. 2017.
森広隆さんは日本シンガーソングライター。2001年にワーナーミュージックよりデビューしました。今年でデビュー20周年。先日Twitter公式アカウントでもご本人が報告しており、お祝いの言葉が多数寄せられていました。
しかし、私はこんな長いキャリアを持つ森広隆さんのことを、先週末までまっっったく存じ上げませんでした。アルバムを一通り聴いて天を仰ぎました。山下達郎も原田真二も大沢誉志幸も岡村靖幸もスガシカオも及川光博も椎名純平もレキシも聴いていて、なぜこの森広隆と出会ってなかったの!?
いやー大きな損失でした、本当、もっと早くに、スガシカオ『Sugarless』をリアタイで聴いてた頃に出会っておきたかった……。直近のライヴ写真見たら、旧 Shikao & The Family Sugar バンマス(=バンドマスター)である森俊之さんが森広隆さんの後ろで鍵盤弾いてんじゃん……俺日本のファンクについて語る資格ねえわ……。
しかし知ったからには、知った上で高い価値を感ずるからには、森広隆さんをプッシュして参りましょう。#FalettinSouls は古典ファンクと現代ファンク、そして日本のファンクを推す番組ですからね! この「ネオフィリア」は、2017年と近年の森広隆さんの作品から拾ってます。
すごくないですか。日本語のファンクなのに、爽やか! 日本のファンク言語は、山下達郎-原田真二ラインのようにアーティスティックになりがちか、岡村靖幸-スガシカオのようにエロティック路線を攻めがちか、米米CLUBやレキシのようにコミックソングにしがちかなんですよね(※もちろん各自多彩ですよ)。
けれど森広隆さんのファンクは、なんていうんでしょう。日本語としてきちんと意味がとおりながら、キャラクターに暴力性もエロティシズムもKyara(及川光博が「王子」を軸に関係性を作るような)もないです。その上で極めてメッセージ性がはっきりしている。この路線で20年やっててくれてたんですね。
「衣食住キュンキュン」と歌うあたりの軽さは、声の伸びやかさと併せて、森広隆さんがデビューした頃のSurface(「さぁ」など)や、近年だとUnison Square Garden 等を連想させられます。それでこのトラックメイク。いやーーー00年代からファンでもおかしくなかった! なぜ2021年まで知らなかった!?
2. 森広隆. ショートケーキ. 2002.
初期アルバム『並列概念』(このタイトルづけがすでにおしゃれすぎる)からの一曲です。このアプローチは、スガシカオの第4アルバム『4Fluser』における「ミートソース」と比較したくなりますね。
こってりした食事に対する執着と、世の中に対するうんざり具合、それらを同時にぶち破るような衝動をファンクネスに塗りこめてぶちまけるような、この所作。「頭がわれるくらい暑いからミートソースを食った」(スガシカオ. ミートソース. 2000.)と「三角アタマにフォークを突き刺したい」(本作)。
食事に対する情緒や衝動を歌うファンクとして2作は比較して面白いです。その上で森広隆さんの歌詞の節回しは魅力的ですね。「一年後に100個食べられるとしてそんな話なんの価値もない 明日でも明後日でもない 今すぐ食べたいんだ 余計なアレンジはいらない」あたりの否定を積み重ねる表現は美しい。
3. 森広隆. Bomber. 2002. (orig: 山下達郎 1978)
「ショートケーキ」と同じアルバムには、スティービー・ワンダー「Isn’t She Lovely」等カバー曲も入っています。そしてこの山下達郎カバーもあります。Bomberは、「山下達郎は1970sからファンクをやってきた」と言う時に必ず言及される曲のひとつです。
ほぼ1stアルバムに山下達郎「Bomber」をカバー曲として選んでいるあたり、森広隆さんはデビュー当時から「日本でこういうファンクをやっていきますよ」と名刺作りをしていた、という聴き方ができますね。そしてこのBomberカバーが、もう山下達郎解釈として完璧なんですよね!
山下達郎さんは、本人の意向により音楽サブスクをほぼ解禁していません。ごくわずかな連名アルバムで聴けることがあるくらいです(『PACIFIC』は以前紹介済)。なのでこの2021年の #FalettinSouls では、森広隆さんの偉大なカバーをつうじて、山下達郎のファンク史的重要性を確認させてもらいます。
4. 森広隆. 2D Star. 2017.
ふたたび時代は近年に戻って2017年から一曲。「ショートケーキ」「Bomber」の、レーザービームのような明瞭な歌声から、だいぶ柔和なヴォーカルになってますね。その声で歌われるのが、おそらくWeb上で奇跡のように歌を歌い続けるヴァーチャルシンガーに救済を与えられる話。
2010s後半となると、初音ミクはじめヴォーカロイド的なものは定着していますし、その後に出てきたVTuberシンガーの黎明期でもあり(たとえばいま「花譜」はそういうポジションですよね)、そういう風景を歌ってるのかなと思います。今年のアニメ映画『竜とそばかすの姫』も補助線になりますね。
5. 森広隆. Rainbow Seeker. 2004.
5曲目は初期曲から。これまたスガシカオと比較するなら「SPIRIT」や「奇跡」か。逃避を我々に赦しつつも希望のある歌をファンクマナーで巧みにまとめ上げている。サビの部分の、エフェクト入ったメロディラインがとてもよい。先週からこの曲を繰り返し聴いてます。中盤以降のインスト部分も本当にskillfulで素晴らしい……。
6. 森広隆. Funk Redemption. 2009.
最後の6曲目は、今回紹介した曲のちょうど中間時制に位置するミドルテンポの曲です。題名の通りファンクです。後半にはコール&レスポンスまであります。しかし、ファンキーな贖罪(レデンプション)とは。
森広隆さんの曲は、ファンクの歌としてはどれも歌詞が素晴らしい(何より日本語としてきちんと意味が通っており、なんらかのまとまった主張があり、コミック路線に逸れず、メッセージとして成立している)。それでいてファンクの反復性と整合している。ほんとありがとうございます。
森広隆さんの歌詞は、他のミュージシャンより相対的にwebでも正確なものを追えない印象があるので、ちゃんと物理盤を入手してゆきたいですね。そしてこの2021年秋より後の新譜が普通に楽しみです。最新の日本語ファンク、これからも期待しています。
FalettinSouls s2eX10: 森広隆特集、おしまい。今日の森さんの音源は、ファンク&ソウルファン以外にも、ふだんスガシカオトークで仲良くさせてもらってる人にも聴いてもらえると良いな。