『リスペクト』感想戦:生活が踊る歌ポッドキャスト・トランスクリプト(前半)

「特集: ソウルの女王、アレサ・フランクリンの伝記映画『リスペクト』感想戦!」(生活が踊る歌)書き起こしダイジェスト

音楽評論家・高橋良朗〔たかはしよしあき〕&ジェーン・スーによるTBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』(月~木, 11:00 -13:00)のAmazon Music ポッドキャスト番組、「生活が踊る歌ポッドキャスト」ep.45 のアレサ・フランクリン伝記映画『リスペクト』に係るお二人の議論があまりに素晴らしく、今月もう十数回は聴いてしまっています。二人の語り口や呼吸含めてあまりに素晴らしかったので、味わい尽くすべく、プライベートで全文書き起こしまでしてしまいました。

Amazon Music のポッドキャスト自体は有料コンテンツであり、それを全文公開することは商業的著作物に対してよろしくないのですが、他方でさらなる註釈により意図が明確にできそうな内容も含まれるため、できるだけ主従関係の従側に終わらないよう、“註釈をがんばった版”としてこちらに掲載いたします。また、情報の的確な伝達というよりは、お二人の語り口の再現を目指したため、いわゆるフィラー(えっと、あの、その、など)を敢えて裁ち落としていません。

この投稿では、映画そのものの紹介についての前半部分(00:00-26:05)あたりについて註釈可能な内容を散りばめ、立体的にアレサのことを理解できるようにしています。

なお、まとめた私自身のアレサ・フランクリンに対する所感や自力解説は、2021年06月のこちらの記事にまとまっていますので、併せて御覧ください。:

tricken. 2021-06-11. #FalettinSouls s2eX05: Aretha Franklin. https://falettinsouls.info/20210611_s2ex05/ (2021-11-27 accessed).

典拠元ポッドキャスト

高橋芳朗・ジェーンスー/TBSラジオ. 2021-11-15.『生活が踊る歌 ep.45 特集: ソウルの女王、アレサ・フランクリンの伝記映画『リスペクト』感想戦!. URL. (2021-11-27 accessed). [1]高橋芳朗・ジェーンスー/TBSラジオ. 2021-11-15.『生活が踊る歌 ep.45 特集: ソウルの女王、アレサ・フランクリンの伝記映画『リスペクト』感想戦!. … Continue reading

Amazon Prime Music プレイリスト: 私が好きなアレサ・フランクリン5選 (1-5:ジェーン・スー/6-10:高橋芳朗. URL. [2]Amazon Prime Music プレイリスト: 私が好きなアレサ・フランクリン5選 (1-5:ジェーン・スー/6-10:高橋芳朗.  … Continue reading

伝記映画『リスペクト』(2021)の基本情報

高橋:まずはちょっとその、映画の『RESPECT』について簡単に概要を説明しましょうか。
スー:はい。

映画『リスペクト』(2021) 公式サイト(配給:GAGA). URL. [3]映画『リスペクト』(2021) 公式サイト(配給:GAGA). https://gaga.ne.jp/respect/ (2021-11-27 accessed) .

『リスペクト』予告 <2021年11月5日(金)公開> / ユニバーサル・ピクチャーズ. [4]ユニバーサル・ピクチャーズ公式. 2021-09-28. [YouTube]『リスペクト』予告 <2021年11月5日(金)公開>. https://www.youtube.com/watch?v=zMr3iaNURJU (2021-11-27 … Continue reading


高橋:映画『ドリームガールズ』[5]ビル・コンドン[監督]. 2006. ドリームガールズ. [Wikipedia] [Yahoo! 映画] https://movies.yahoo.co.jp/movie/326032/ (2021-11-27 accessed). … Continue readingでアカデミー賞助演女優賞受賞。歌手としても第51回グラミー賞受賞経験のある[6]BARKS. 2009-02-09. ジェニファー・ハドソン、涙のグラミー受賞. https://www.barks.jp/news/?id=1000046937 (201-11-27 accessd). … Continue readingジェニファー・ハドソンが、ソウルの女王アレサ・フランクリンの半生を演じた伝記ドラマ。

スー:はい。

高橋:少女のころから抜群の歌唱力で天才と称されたアレサは、ショウビズ界でスターとしての成功を収めた。しかし彼女の成功の裏には、尊敬する父・愛する夫からの束縛や裏切りがあった。すべてを捨て、彼女自身の力で生きていく覚悟を決めたアレサの魂の叫びを込めた圧倒的な歌声が、世界中を歓喜と興奮で包み込んでいく……。アレサ本人から生前に指名されたジェニファー・ハドソンがアレサ役を演じるほか、フォレスト・ウィテカー、マーロン・ウェイアンズ、メアリ・J・ブライジらが顔を揃える。えーメアリ・J・ブライジはね、アレサが敬愛していたジャズシンガーのダイナ・ワシントンを演じていますけれども。でアレサは1942年03月25日生まれですね。で2018年8月16日に76歳で亡くなってますけれども。

スー:今思うとちょっと早かったね!

高橋:早いですねえ〜。

スー:あと10年生きていてもよかったね。うーん。

高橋:そうねえー。同世代のアーティストでね、全然活動しているアーティストいますからねえ。……で、歌手としての活動期間は約60年、に及んでいるわけですけれども。この映画『リスペクト』では、ま、デトロイトで育って父親の教会でゴスペルを歌っていた少女時代から、えー1961年にま、ポピュラーシンガーとしてデビューしたコロンビア・レコード時代。

スー:うん。

高橋:そして1967年にソウルシンガーとして再出発するアトランティック・レコード時代。でドキュメンタリー映画も制作されました1972年のゴスペルアルバム『Amazing Grace』のリリースまでを描いていると、いう感じですけれども。[7] … Continue reading

スー:そうだね。だからいわゆる、中期まで? 中期まで、っていうところですね。

高橋:そうですね。……私ねえ、まあちょっと、映画鑑賞中。2回ほどね。ちょっと涙腺が。

スー:おう。そうですか。

高橋:決壊してしまいましたけれど。どうでしたか、スーさん!

“ビッグ・ママ”の意外な一面 そして女性の権利向上の戦い

スー:いやー、あの。アレサ・フランクリンっていうと、日本でも名前知ってるって人は結構多いと思うんですよ。で曲に関しても、あのーたとえば。ヒップホップだったりR&Bでサンプリングされてたりすることもあって、聴いたことは一度はあるっていう人はいると思うんです。ただ、どんな人かっていうと、あの結構大きな体で、迫力ある歌を歌う、もう……山! の如く動かない?

高橋:ふふふふ。

スー:こう……鉄の、鉄とは違う?

高橋:ビッグ・ママみたいなね?

スー:ビッグ・ママ。“みんなのビッグ・ママ”みたいなイメージしかないと思うんですね? 私もどっちかというとそうだったんです。若い頃の曲を聴いてた、時も! でもこの映画をみて、あ、彼女も本当にたった一人のかよわい少女だったんだな、しかも! 結構長い間? で、自分の運命っていうのを自分の手に取り戻すまでに、かなりの苦労があった人なんだっていうことがよくわかりました。端的に言うと、すごく、「人に、支配、されやすい」というか。

高橋:ねえ。うーん。

スー:男性……夫だったり、父親だったり、そういうものに……の期待に一生懸命応えることで自分の存在を証明しようと……

高橋:うん。

スー:する子だったんですよね。これがけっこう意外でした。

高橋:そうだから……そうそうそう、スーさんが今お話したように、父親のC.L.フランクリンと、あと夫でマネージャでもあったテッド・ホワイト、の支配……だったり。

スー:ま、暴力だよねえ。

高橋:虐待を受けていたっていうことですよね、アレサが。

スー:そう。

高橋:で、この映画だと、アレサが歌う歌すべてがその、なんだろう、アレサに立ちはだかるその……男たちに向けられてたもの? 

スー:うん、うん。

高橋:つまりひいてはその、フェミニズム[8] … Continue readingとか、女性解放のメッセージに呼応するものとして……描かれた、っていう感じですよね。

スー:とにかく……愛されてるんですよ、基本的には。色んな人に愛されて。蔑ろにされてきた人生ではないんです。ただ。愛され方が……そこに必ず支配がくっついてくるんですよね?

高橋:うん、そうそうそう。

スー:「俺のいうことを聴いていれば、お前はうまくいくんだ」「俺がいないとお前はだめなんだ」っていうことを、ずーっと……微に入り細に穿ってというか、機あるごとに、叩き込まれてきたことによって、彼女自身が自分自身を信じるまでに時間がかかってるっていうのをけっこう丁寧に描いていますよねえ。

高橋:アレサは、あんだけこうカリスマ性があってねえ、強いイメージのあるシンガーだから。彼女がね? そんな、こう、もともとこうそんなに、あんまり自分に自信が持てなくて。

スー:ほんと、私達と変わんないですよ、まったく。

高橋:ね! それがほんとに、意外~でしたよねぇ。

スー:で、実は周りにいた、支配をする者たち、こそが! 彼女がいないと輝けない。存在の理由、自分自身を証明できないような人たち、弱い人達だったんだけど。それを〔アレサ自身は〕逆に取っちゃってたんですよね。

高橋:うんうんうん、たしかに。

スー:ただまあその時代が時代で。公民権運動[9] … Continue reading、60年代からのっていうところで、アメリカ黒人に関しては自分たちの……誇りを取り戻すとか……平等な・公平な社会を手に入れるっていうことに関して、もう、かなり、苛烈に、運動が起きてた時期ですから。……そこと相まって彼女が、“自分自身”っていうものに少し目覚めていったっていうのもありますよね?

高橋:そーおですね。

スー:それがなければ彼女はずーっと……田舎の教会で歌ってる、街の、クイーン……ぐらいだったかなと思いますよ。

高橋:ま、キング牧師とね、あのー帯同してたこともあるみたいですからね。きっとそういう影響は確実に出ていると思います、うんうんうん。

スー:お父さんはね、なんとか売り込もうとはして、色々やったりとかはするんですけれども。お父さんも別にその娘の才能には気づいているけど、いわゆるミュージシャンとか、音楽の人ではないので。どうしたってやっぱそこに齟齬が生まれてくるわけですよね。そうするとまぁーほんとに、彼女がかわいそうだなと思うのが、なんかその、彼女自身が自分自身を表現しようともがいたりとか、拒絶をしようとすると、それを“デーモン”っていう扱いにされていたじゃないですか。「悪魔が、お前の中の悪魔が騒いでいるぞ」っていう。そう。で、それを抑えることが信仰と結び付けられるみたいなことを囁いてて、ちがうから! ちがうから! も、画面にむかって「ちがうからッ! ちがうからッ!」って。

高橋:アッハッハッハ。

スー:あたしも、手を出して突っ込みそうになりましたけど。

高橋:ああー。でもーさあ、やっぱ。ジャネット・ジャクソンも父親から支配されてて。それを『コントロール』っていうアルバム[10]註:1986年発売の彼女の3rdアルバム。このアルバムから、今に至るまでのジャネット・ジャクソンのパブリック・イメージが固まったとされる。で、男性からの解放を唱えていましたけど。

スー:ありましたね。

高橋:やっぱりあるんですねそれは。脈々と.

Janett Jackson. [Album] Control. 1986.

スー:いやあー、もーう、ショウビズだけじゃなくて色んなトコにあるでしょう。特に、あの、普通のご家庭でもあるし。特に才能のあるお子さんなんかはそういうところに絡め取られやすいところ、あるのかもしれません。もちろんそういう親ばっかりじゃないけれども。ただ……彼女がなぜあんなに早くして子供を身ごもったのかとか。

高橋:うん。

スー:なぜ……あの、自分の地元から、あんなにも出たくなったのか、とか。なぜ母親……とは、ああいう関係になってるのか、とか。そういうの映画を見ればわかるんですけど。なるほどここを全部ひとつひとつなぎ倒して自分の中で咀嚼してビッグママになったんだと思ったら、ほんとそりゃ立ち上がって拍手するわ! っていう。

高橋:うーん! そうね! そうアレサは12歳? 13歳でねえ最初の子供をね、生んでいるんですよねえ。

スー:つまり本人の意志とはまったく関係ないってトコなんですよね。

高橋:そうねえだからその……アレサ、後のアレサがこういうあのちょっとさあ、緊張感をもったひとっていうかさ。あと、過去をあんまり語りたがらないとかさ。

スー:そうだったね。

高橋:うん。そういうのが、すごいよくわかりますよね。

スー:わかりますねえー……。いやーだからジェニファー・ハドソンほんと……すごいプレッシャーだったでしょうね! 本人から指名だからね!

(※本人からの指名があったことは、下記特別映像でも語られている。)

『リスペクト』特別映像(A look inside) <2021年11月5日(金)公開> /ユニバーサル・ピクチャーズ公式 [11]ユニバーサル・ピクチャーズ公式. 2021-10-29. 『リスペクト』特別映像(A look inside) <2021年11月5日(金)公開>. https://www.youtube.com/watch?v=j7xRMWygSyY … Continue reading

高橋:うんー。結構やっぱりねえ。そのー……海外のメディア、『リスペクト』の評価を見ると、厳しいこと言われていたりもするんですけど。まあーでも健闘していると思いますけどね。うーん。

スー:私は実は、そのジェニファー・ハドソンの素性は知らないんですけど、素性とか、その、ライフエピソード的に言うとたぶんメアリJ〔=メアリ・J・ブライジ〕なんですよね。彼女のアレサ・フランクリンの抱えた大きな痛みっていうのを把握しているのは。ただま、確かに歌唱はぜんぜん違うので。メアリJも役者さんではないし、だからそこは難しいんだろうなって思ったんですけど。……まあー、でも、あれなんでしょヨシくん〔註:高橋芳朗のこと〕、あのー、伝記読んだら、この映画はかなりマイルドになってたんでしょう?

高橋:そーうですね。あのー、いまシンコーミュージックから、もうまさに『リスペクト』って言うタイトルの、アレサのけっこう分厚い伝記本が出てますけど……。 (一呼吸置く)相〜当えぐいですね。うん。特にそのー、少女時代のお話は。結構……あんまりちょっとねッ……うん……強くおすすめするのもどうかと思うぐらい、けっこう厳しい内容になっていますけどもね。

〔言及されている著書は デヴィッド・リッツ. 2014=2016. 新井崇嗣訳.『リスペクト』シンコー・ミュージック. (Amazon URL) 。〕

スー:メアリJもそうなんだよね。

高橋:ねえーそうそうそうそう。以前〔2021年05月に〕このポッドキャストでもね、メアリJの、えー、ライフストーリー紹介しましたけれども[12]高橋芳朗 and ジェーンスー. 2021-05-07. [Podcast] 特集: ヒップホップソウルの女王、メアリー・J.ブライジの傑作ドキュメンタリー『マイ・ライフ』. … Continue reading、結構重なる所ありますよね。

スー:ねえ。だからやっぱり、少女に対する搾取っていうのが……まあ、インナーシティみたいなところ、メアリJはそうでしたけど、だけじゃなくって……まぁいまだにある話でしょうし、そうじゃないアッパーなところでも起こっていることでしょうし。もう……胸が潰れそうになりましたね!

高橋:ね。うん。まあジェニファー・ハドソンはジェニファー・ハドソンで、その『アメリカン・アイドル』[13] … Continue readingでオーディションをやった時にアレサの曲を歌っていたり、アレサが亡くなる前に「自分を演じるのは彼女だ」って〔アレサに〕指名されてたとか、そういうバックグラウンドがね。ストーリーがあったりするんですけどね。

スー:あとまあ、頼りない、みんなのいい子ちゃんだった頃のアレサ・フランクリンっていうのを演じる、あの純真無垢な……。

高橋:確かに。

スー:あの顔とかもうー見ててね! 涙出てきましたよね!

高橋:ふふふ。そういうところではジェニファー・ハドソンがね、あのー適しているところもあったのかもしれないすね。若い頃のアレサ役には。

スー:厳しいのよ。メアリJ演じるさあ、あの……ダイナ・ワシントンにさ。「あんたなんでも歌っちゃってるじゃないの!」って言われるシーンとかあるじゃないですか。あそことかキツいだろうなあー。「だってだって、みんながイイって言ったものをとにかく演ったらうまくできちゃうんだもん」!

高橋:そうねー。うーん。そうそう。だからジャズも歌っちゃうし。

スー:そう。

高橋:ポピュラーソングも歌っちゃうし。

スー:そう。

高橋:ゴスペルも歌うし、リズム&ブルースも歌うしみたいなね?

〔註釈:1960年代前半のいわゆる「コロンビアレコード時代」は、実際に多ジャンルの歌を歌いながらなかなか大ヒットを飛ばせなかったという位置付けで現在も語られている。そうした状況については、評伝のほか、『ブルース&ソウル レコーズ』における159号(2021年05月)161号(2021年10月)を参照。なお、ヒットが出なかったのはコロンビアレコード側の采配のせいというだけではなく、アレサ本人の要求の結果という要素も少なからずあり、自業自得な側面もあったという説もある。そうした説がありうる点については、映画では裁ち落とされているといえるだろう。〕

スー:で、最初から売れたわけじゃないんですよね。まあでもそこでどうやってあの売れる、ところにいったかっていうきっかけのあの話とかも面白いですよね。

高橋:うんうんうんうん。うんうんうん。

スー:〔フェイム・スタジオでの〕レコーディング。このあたりもぜひ見てほしいなって思うんですけど。

高橋:ちなみに、ダイナ・ワシントンにこう、ね。あの、アレサがこう……喝を入れられるというか、シーンは、あれは本当はエタ・ジェイムスが、食らったエピソード。

スー:へえーーー。

高橋:これもアレサのね、さっき言った『リスペクト』の自伝〔原文ママ〕[14]デイビッド・リッツによる評伝『リスペクト』は、アレサが制作に直接関わっていないため、「自伝」とは言えない。アレサの「自伝」は、1999年の … Continue readingに入っているんですけれども。映画化するにあたってアレサの話として取り込んだっていう感じですね。ダイナ・ワシントンは、結構大変な……彼女は彼女で大変な人だとは思うんですけどもねー。そうそうそうそうそう。……でこの映画たぶんあのー、内容的に、ここ数年のさ。#Metoo運動 [15] … Continue readingとかさ。そういうところとも、あのー、重ね合わせて、語られたりするところもあるんだろうなーと思うし。まあ全然そういう内容の映画だと、思うんだけども! アレサ自身がもうそういうね? あのアレサの、なんだろう、生い立ちをストレートに描いたら、そういう内容に、なっていくっていう話ですよね?

スー:だからこそあの『アメイジング・グレイス』に至るまでのあの道のりと、あそこに至った時の……彼女の……表現したかったことと、そしてその結果? あれがそのスタンディング・オベーションですよね! ね!

高橋:あっは、確かにね! そう、だからちょうど! あの、ラッキーなことにですね、〔2021年05月に映画館で上映された〕『アメイジング・グレイス』、ドキュメンタリー映画〔配給公式URL: https://gaga.ne.jp/amazing-grace/ 〕が、〔映画『リスペクト』の〕日本公開に合わせてなのかな? あの、配信がスタートしています。

映画『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』予告編 / シネマ・トゥデイ

Amaozn Prime 「アメイジング・グレイス」(URL)

高橋:DVDもリリースされてますので。

スー:ぜひぜひ。

高橋:『リスペクト』劇場でご覧になったら、も、速やかに。

スー:移動して。

高橋:あっは、そう、速やかにねえ、あの、ご自宅で、DVDなり配信なりでドキュメンタリ、ご覧になっていただきたいなあと思いますけれどもねー。

「ソウルの女王」という惹句に隠れてしまうものについて

高橋:うーん。……あと、なんだろうやっぱりねー、あと、さっき、スーさんもそんなようなことを軽く触れていましたけど。

スー:はい。

高橋:アレサの……キャッチフレーズですよね。”Queen of Soul”、「ソウルの女王」って僕ももう、何回使ってきたかわかんないですけど。やっぱりその……「ソウルの女王」っていうフレーズの、キャッチーさが……ちょっと、なんか思考停止〜……にいざなうところがあるというかね?

スー:うん、うん、うん。うん、うん!

高橋:彼女の……その、本来の、やってきたこと? 偉業を……ちょっとー……あんまりこう、語りづらくしてしまってるところがある。

スー:簡単にしてしまっちゃいますよね?

高橋:そうそうそう、そうなのよ。で実際にその、歌すごいじゃん! ホントにソウルの、女王なんですよ!

スー:そうなんですよ。

高橋:あの、他人の曲を歌ったら自分のものにしちゃうし、ね。歌そのものの意味を変えちゃうような、すごい歌を歌う人だから確かにソウルの女王だしレディ・ソウルではあるんですけれども……。だからシンガーとしてのアレサ・フランクリンは……まあ! うん。正当な評価をされているとは思うんですけれども。

スー:うん、うん。

高橋:【ミュージシャン】としてのアレサだったり、【アクティビスト】としてのアレサに対する、評価は正直ちょっと、おろそかになっちゃってるなっていうのはこの映画をみて……思ったところですかね。[16] … Continue reading

スー:なるほどね、なるほどね?

高橋:だからあのー、ま、さっきも軽く触れましたけど。キング牧師の活動に帯同して歌いつつ、彼の葬儀でも歌っ……てて。それがさあ! のちのちオバマ大統領の就任式でまた歌っているっていうさあ。

スー:そおーなのよ。

高橋:スゴイことじゃないですかこれって!?

スー:ほんと素晴らしいですよあれは。

Aretha Franklin sings at President Barack Obama’s 2009 Inauguration (C-SPAN) [17]C-SPAN. 2018-08-16. [YouTube] Aretha Franklin sings at President Barack Obama’s 2009 Inauguration (C-SPAN) https://www.youtube.com/watch?v=QW7n8hklwsk (2021-11-27 accessed).

高橋:だから、その……アフリカン・アメリカンのその、地位向上の歴史に、常にこう、アレサの歌があったっていう……そういう説得力ですよね? うん。そうそうそう……。あとミュージシャンのアレサとしては、ま、劇中でもたびたびちょっと仄めかされたところあったと思うんですけど。やっぱ【プロデューサー】とかさ、【ソングライター】とかさ、【アレンジャー】としてもやっぱり、いろんなものがあるんですよね?

スー:これ出てるんですよねちゃんと。あの、〔映画『リスペクト』の〕映像でも。

高橋:けっこうさ、映画の劇中でもさ、あのー、このアレンジじゃだめだけど、アレサがこうちょっと、こういうフレーズを加えたら曲としての精度が上がったりとか。[18] … Continue reading

スー:そうそうそう。

高橋:あと『アメイジング・グレイス』もね「私にプロデュースさせてくれ」っていうさ、あの、アトランティックのプロデューサーのねジェリー・ウェクスラーに直訴するシーンとかあったけど、やっぱそれで功を奏しているわけですからね? うんうんうん。あとま、これはちょっとやっぱ映画では、あのー描ききれなかったトコだけど、【クロスオーバー性】もすごいあったひとで。

スー:うん、うん。

高橋:まあソウルとポップスを跨ぐような活動をしてて。70年代だと、ロックの聖地と言われているそのフィルモア・ウェストっていうさ、会場でライヴ・パフォーマンスを〔1971年に〕やって、それが音源化されてね? ライヴ・アルバムの名盤としてね、今も語り継がれてますけれども。[19] … Continue reading

高橋:あと80年代。ちょっと映画では描ききれなかった80年代も、ユーリズミックス(Eurythmics)〔Eurythmics, Aretha Franklin, et al. 1985. [20]Eurythmics. [Spotify] [Album] Be Yourself Tonight. https://open.spotify.com/album/2tbXCl8en5ZDVnHIk1OZGI?si=6PgfjcTyQCmSLIsmFiVSvA (2021-11-27 accessed). 〕とか、ジョージ・マイケル〔George Michael and Aretha Franklin 1986〕とか。

スー:そうですそうです、ジョージ・マイケルやってたね!

高橋:キース・リチャーズ、エルトン・ジョン、カルロス・サンタナとかと共演して成功を収めてたりするし。

ユーリズミックスとの共演曲, 1985年収録
ジョージ・マイケルとのコラボ曲 “I Knew You Were Waiting (For Me), 1986
キース・リチャーズ(ローリング・ストーンズ)との共演曲, 1986
エルトン・ジョンとの共演, 1989
カルロス・サンタナとの共演, 1986 [21]Discog のクレジットより。https://www.discogs.com/ja/release/17217835-Aretha-Franklin-Whos-Zoomin-Who (2021-11-27 accessed).

高橋:だから60年代から活躍しているようなキャリアのあるシンガーで、こう時代ごとのサウンドにこう変化にうまく対応できてる? そういうフレキシビリティみたいなのがあったひとって……なかなかJBとかも、ジェイムズ・ブラウン(James Brown)とかもけっこう苦戦していたと思うんですよ。

スー:あの、それが最初は仇になっていたんだけどね。何でも対応できちゃうことが最初仇になってたけれど、後半に武器になったってすごくいい話ですよね。

高橋:そうね。60年〔代〕初頭前半はジャズとか歌ってて、〔60年代〕中盤以降はソウル。で70年代ニューソウル[22] … Continue readingとかファンクも歌っていて、80年代ブラコン〔ブラック・コンテンポラリ〕[23] … Continue reading歌ってて、90年代もね、まあ、90年代のヒップホップ・R&Bみたいなのにも対応しているから……うーん、これはやっぱり……なんだろうな、いわゆる“歌バカ”な人にはできないことだよなと思うし。[24]この一連の、1980年代のコラボを列挙しながらアレサ・フランクリンの音楽家としての柔軟性・対応力について論じた高橋さんの仕事はすばらしい。

スー:そうですね。そうですね。

高橋:実際R&BチャートのNo.1ヒット、JBとかスティーヴィー・ワンダーよりもアレサのほうが、多いんですよね。

スー:そうなんだ! ふーん。

高橋:そうそうそう。あとこれは自伝〔原文ママ〕[25]精確には「評伝」。リッツ2014=2016 に書かれていたんだけど。「ピアニストとしても素晴らしい」って言う風に、スモーキー・ロビンソンが。

スー:あーっ。よく弾いてるもんねいつもね?

高橋:スモーキー・ロビンソンがね、その、証言してました。[26]おそらく(リッツ 2014=2016: … Continue readingそう、アレサってなにげにピアノとセットになっているよね?
スー:そう、そう! うん、そのイメージ。

高橋:ピアノ弾いている、あのー姿が、こう、イメージとして定着しているところがあると思うんですけどね。

遅れて振り子のようにやってくるビッグ・ママの鉄球

高橋:うん。あ、そだ。映画の見所? みたいなところある、好きなシーンとか?

スー:えー、好きなシーンは……。

高橋:印象的なシーン。僕はやっぱでもあれですかね、スーさんも言ってたけど、アトランティック・レコードに移籍して、アメリカのアラバマのマッスルショールズ……
スー:うん。

高橋:のFAMEスタジオに行ってレコーディングして。

スー:はい、はい! あそこ最高ねっ。

高橋:あそこでこう、I Never Loved A Man ……(息を深く吸う)あの誕生の瞬間はかっこ……見事でしたですね。すご……。

スー:あそこは滾るものがありましたね。

高橋:あそこはやっぱりいちばんの見せ場というか、あの、力が入っていましたね。伝記でもすごい、あの、詳細に記述されてた所ですけど。[27](リッツ2014=2016: 170)からの記述が該当する。

〔註釈:マッスル・ショールズ・FAMEスタジオに関しては、スタジオに関するドキュメンタリ作品もある。その中でもアレサ・フランクリンとフェイムスタジオとの関わりが描かれた。『黄金のメロディ マッスル・ショールズ』([監督]グレッグ・フレディ・キャマリア 2014)(Amazon Prime)〕

スー:ううーん、うん。彼女がその、さっき〔ヨシさんが〕言った、歌を歌うだけの人じゃないってことがハッキリとわかるシーンで。自分の人生の舵を……もしかしたら最初に取った瞬間かもしれないよね。大きく取った瞬間かもしれない。私はですね、あの、ヨーロッパにツアーに行ったシーンが好きです。覚えてます?

高橋:パリ?

スー:パリだっけ? オランダじゃなかったっけ?

高橋:オランダだっけ?

スー:ちょっと今、すぐ思い出せなくて申し訳ない。あの、ヨーロッパのツアーに行った時に、その土地々々の特性があって。そのツアーマネージャーが「たぶん花を投げ込まれるから注意してください」みたいなこと言ってたじゃない。

高橋:あったあった。

スー:で、なんだかよくわかんないけどやってみたらもーとにかく凄い量の花が!

高橋:アッハハッハッハッハッハ!

スー:ずーっと投げ込まれてる。もそれで、ちょっと当時からうまくいってなかった夫とはやきもきして、なんかこうトラブったりするんだけど。でその前にもあったけどさ、夫がなんか、自分の力を示すために、示威行為をするために、せっかく決まっていたものを一回ひっくり返したりするじゃん。でそういうのとかに対して、それに、なんていうの? 寄り添ったりというかさ、その言うこと聞いちゃったりとかしてた、アレサだったんだけど。結局言ってやったらもう「ステージの上はもうあたしのモンだけど?」っていう。

高橋:あっはっはっはっは。はっはっはっはっは。

スー:しれっとした顔であの、花投げられながらやっている私はそこが、意外と自由の象徴で好きですね。

高橋:うんうんうん。なんか、そうね。映画的にいいシーンだったよね。絵面的にもね。

スー:そうそうそう。も、とにかく花の量が半端ないからみなさん見て!

高橋:あはは! そうそう。あとそうだなぁー……そう、さっきのスタジオレコーディングの話、アトランティックに移行して以降のスタジオのレコーディングシーンが結構フィーチャーされてるんですけど……。あの一連のシーンに感銘を受けた人にちょっと聴いてほしいアルバムがあって。2007年に、Rare And Unreleased Recording(s) From The Golden Reign Of The Queen Of Soul っていう。

スー:長いですね!

高橋:アレサのデモ音源集とリハーサル集……

スー:ああーすごい。

高橋:……があるんですよ。これが60年代と70年代。これねえ! ……あの映画見終わったあと聴くと、もうすごいなんか迫真のドキュメンタリーって感じで、絵が浮かんでくるんですよ。

スー:なるほど。

高橋:これはねえぜひ、あの、チェックしてほしいし。映画を撮るにあたってにこの音源をこう参考にしてるところもきっとあるんじゃないかなと思いました。はい。……〔スーさんが〕アレサを初めて聴いたのって、いつ?

スー:アレサ初めて聴いたときなんて覚えてないよだって気がついたらアレサ・フランクリンっていたじゃんっ。〔一息で〕

高橋:あっはっはっはっは、そうか。

スー:もちろん大学時代に私は、えっとソウルミュージック研究会に入っていたのでそこでいっぱい聴くことにはなるんですけど。実際にアレサ・フランクリンが新譜をちゃんと出して、自分がオンタイムでビルボードのチャート上がってきたっていうのって、1曲がらいしかないんですよ。

高橋:そっかあ!

スー:1998年の、A Rose is Still A Rose。

高橋:はい。ローリン・ヒルがね、プロデュースした。はい。

スー:そう。”What I Am, What I Am “が入っているやつね。

高橋:エディ・ブリッケル 〔Edie Brickell & New Bohemians〕の「What I Am」をサンプリングしたやつね。

スー:あれですけど。あれだけなんですよ。オンタイムでいうと。で、やっぱりね。あれをあのタイミングで突然ドン! とやられても、わっかんねえのよ!

高橋:うんうんうん、そうね。

スー:バックグラウンドとか、で。なんとなく、ソウルの女王みたいな人がすごい人が、「あ、リスペクトされてんだなこのひと」……あれミュージック・ビデオに結構な数のミュージシャン出てんじゃん。

高橋:そうですねーえっと フェイス・エヴァンス(Faith Evans), えーグルーヴセオリーの アメル・ラリュー(Amel Larrieux)とチェンジング・フェイシズ(Changing Faces)……

スー:そう2人出てるよね!

高橋: あとA Tribe Called Quest の……

二人:「「Q-Tip」」

スー:はい。なんかこう見てると「あっこの人も! この人も!」って出てる、ような感じなんです。だから凄いリスペクトされているのはわかるし歌も巧いのもわかるんだけど、「でも、なんで?」みたいな感じも無きにしもあらずなんだけど。いまこの映画をみて、ある程度知って、曲も古いのも聴いて、このあたしのこの年齢、アラフィフの年齢で聴くと、も、ドスーン! みたいな!

高橋:来るよねえ〜。

スー:鉄球が飛んできた、みたいな!

高橋:アッハッハッハッハ!

スー:あの時はフーンフーンとかって聴いてたけど。

高橋:いやだからちゃんと、アレサのヒストリー……とか、彼女の功績を、こうちゃんと追ってて、あの A Rose is Still A Rose を聴いたひとはもーう本当に……。

スー:あの時やっぱ……。

高橋:喰らっただろうね。

スー:うーん、喰らったと思うし、アメリカにいるアフリカン・アメリカンの女性は、本当に勇気づけられただろうなと思います、後で詳しく話しますけど。だから私の初めてのアレサ・フランクリンとの出会いってゆったら、やっぱこれになっちゃうんですよ。

高橋:はい。

スー:その前にもっとサンプリングされているものとか、知識としての Respect だったり Think だったりっていうのはもちろんありましたけど。原体験として、アレサ・フランクリンが自分の聴いてるチャートに入ってきたっていうのはこれ。

高橋:そっか。

スー:だから……だから二回出会っている感じ、この曲には。

高橋:ほんほんほん。そっかぁ。

スー:1回目これと出会って「あーん流行ったよねすごいねほわーん」って感じだったのが、50になって、鉄球が! ものすごい勢いで! ものっすごいむこうまで行っていた鉄球が振り子のごとく返ってきて! ボカァァァァーーーン! ワアアアアアッ! 粉砕骨折!!!

高橋:いやこれはねえ! ……僕もちょっとそれは、まったく同意見でございます、はい。まったく同じ体験をしました。

スー:当時わかってなかったよねえ。

高橋:そだねえ、ほんとに……。僕はあの、そうね。わかっていないながらも『ブルース・ブラザーズ』かな?[28]ブルース・ブラザーズの映画および彼らの音楽的出自については、#FalettinSouls s2eX06 特集: ブルース・ブラザーズと1970s末の“保守”ソウル・シーン … Continue reading

スー:あ、Thinkですね。

高橋:Thinkをみて。

スー:あれが最初かな。

高橋:最初かな。あと80年代にさっき最初に話した一連のコラボかな? そのユーリズミックス(Eurythmics)を特に、ユーリズミックスの Sisters Doin’ It For Themselves と。あとジョージ・マイケルの、I Knew You Were Waiting (For Me) か。いや特に……さっきの A Rose is Still A Rose に通じる話なんですけど、ユーリズミックスの “Sisters Doin’ It For Themselves”? これももうタイトルの通りなんですよっ! [29]彼女たちは自分自身のことを為している、と訳せる。
スー:「当時はわかってございませんでした」シリーズですね!
高橋:もうフェミニスト・アンセムなんですよ!

Now, there was a time when they used to say
That behind every great man
There had to be a great woman
But in these times of change you know
That it’s no longer true
So we’re comin’ out of the kitchen
‘Cause there’s somethin’ we forgot to say to you (we say)

Sisters are doin’ it for themselves
Standin’ on their own two feet
And ringin’ on their own bells
Sisters are doin’ it for themselves

かつて男たちはこう言っていた
“偉大な男の後ろには偉大な女がいなければ” と
けれどこの変化の時代 あなたは知っているでしょう
それがもう真実ではないことを
だからもうキッチンから出ていくの
あなたに言い忘れていたこともあるしね

女達〔シスターズ〕は自分で自分の面倒をみる
その二つの脚で立って
そして自分たちのベルを鳴らすの
自分たちのことを為すんだって

Eurythmics. Sisters Doin’ It For Themselves. 1985. (訳詞は引用者による)

もうだからやっぱり……欧米でのアレサ・フランクリンって、ただの“歌がうまいひと”じゃないんですよね!? やっぱり、“戦うシンガー”なんですよね?

スー:その戦うシンガーが、実はすっごく繊細な話というか。ゴッド・ママみたいな人がいて、歌が巧くって、カバーもできて。すごいみんなが知ってる曲で、サンプリングされている事実がある。で、よくよくちょいさかのぼって聴いてみると、どうやらフェミニズムとか人の解放とか人権とかそういう歌について歌っているらしい。で、じゃあってゆって、えー、ちょっと遡っていくと「なるほどこういう60年代で活躍をしていたんだね」で止まっちゃうと! 終わりなんですけど。今回の映画はそこの後ろ、一番最初の彼女の出だしから行ってるから、「なるほど元から強いひとではなかったんだ」っていう、そこですよねやっぱり! こういうアクティビストの人たちってみんな、元々ものすごくガッツがあって、そういう資質に恵まれた人たちっていうふうに思われがちだけど、いや……【隣のミヨちゃん】、彼女だったんだよ彼女も、アレサも……っていうのが、わかるような映画をつくったっていう意味ではすごく意味があるなと思いました。[30]ここ、めちゃめちゃ感動しました。ジェーン・スーさんありがとう。「隣のミヨちゃん」の話は忘れません。

高橋:確かに、特にやっぱり日本のリスナーに向けては、ね。すごいいい、あのー、サンプルになるんじゃないかなって思いますね。

スー:同じような経験をしている女性も、いなくはないと思うので。“あ、これは私のことだ”っていうふうに思ってもらえるかもしれない。

高橋:やっぱ僕ねえあのぉ……女性シンガー、女性アーティストが……フェミニズムとか女性、というものに向き合って何か表現をするときに、やっぱアレサと? マドンナ? は避けて通れないんじゃないかっていうところあるんじゃないかなと思いますけどね。

スー:マドンナはまた飽くなきチャレンジをずっとしているからねえ。

高橋:うーーーん。で、マドンナはそういうイメージがわりと日本でも確立されていると思いますけど、アレサはちょっとそういうところないじゃないですか。

スー:そうですね。ていうのは、やっぱりその、「大御所すぎる」っていうことと、年齢的に、ちょっと過去の人になってしまった所があったわけですよね。「いやそうじゃないんだ」ってことがわかるといいですね。

高橋:その辺がちょっとこの映画の登場でねえ、ちょっと変わってきたらいいなって思いますけれど。はい。

後半に続く)

脚注一覧

脚注一覧
1高橋芳朗・ジェーンスー/TBSラジオ. 2021-11-15.『生活が踊る歌 ep.45 特集: ソウルの女王、アレサ・フランクリンの伝記映画『リスペクト』感想戦!. https://music.amazon.co.jp/podcasts/b87137e8-542f-4d39-9404-ae9feff33e94/episodes/15429c75-6e20-43ab-b880-a877b11e1764/%E7%94%9F%E6%B4%BB%E3%81%8C%E8%B8%8A%E3%82%8B%E6%AD%8C-%E7%89%B9%E9%9B%86-%E3%82%BD%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E3%80%81%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%B5%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%81%AE%E4%BC%9D%E8%A8%98%E6%98%A0%E7%94%BB%E3%80%8E%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%AF%E3%83%88%E3%80%8F%E6%84%9F%E6%83%B3%E6%88%A6%EF%BC%81 (2021-11-27 accessed).
2Amazon Prime Music プレイリスト: 私が好きなアレサ・フランクリン5選 (1-5:ジェーン・スー/6-10:高橋芳朗. https://music.amazon.co.jp/user-playlists/1e594719b3b54085b46f213226fab46ajajp?marketplaceId=A1VC38T7YXB528&musicTerritory=JP&ref=dm_sh_9iPBk26uMi74yq5jkjyl3SEwt (2021-11-27 accessed).
3映画『リスペクト』(2021) 公式サイト(配給:GAGA). https://gaga.ne.jp/respect/ (2021-11-27 accessed) .
4ユニバーサル・ピクチャーズ公式. 2021-09-28. [YouTube]『リスペクト』予告 <2021年11月5日(金)公開>. https://www.youtube.com/watch?v=zMr3iaNURJU (2021-11-27 accessed).
5ビル・コンドン[監督]. 2006. ドリームガールズ. [Wikipedia] [Yahoo! 映画] https://movies.yahoo.co.jp/movie/326032/ (2021-11-27 accessed). ジェニファー・ハドソンはこの映画が俳優業としてのデビュー作となった。
6BARKS. 2009-02-09. ジェニファー・ハドソン、涙のグラミー受賞. https://www.barks.jp/news/?id=1000046937 (201-11-27 accessd). ジェニファー・ハドソンはこの第51回グラミー賞の「最優秀R&Bアルバム」部門を受賞。
7当時売れた盤は記事中に埋め込んだとおりだが、近年、曲順を本来の2日間の順で愚直に収録したコンプリートエディションも発売されている。(Spotify URL
8広義には、女性の社会全般における権利の向上・獲得に係る広い言説、およびそれに紐づく社会運動を指す。アレサ・フランクリンの青年期には、今では第一波フェミニズムとも呼ばれる「ウーマン・リブ」運動が立ち上がっていた時期でもある。
91950年代から60年代にかけての北米で継続的に行われた、主にアメリカ黒人、すなわちアフリカン・アメリカンの人々によって担われた、人種差別の解消を求めて行われた一連の運動を指す。この運動を主導したのがマーティン・ルーサー・キングJr牧師であったが、1964年に暗殺された。同時期に活動していた公民権運動の代表的人物とは、ネイション・オブ・イスラムの指導者であったマルコムXもいるが、キング牧師は様々な公民権運動の中でも特に非暴力路線を取る活動家であったことが特徴的であった。他方でマルコムXの暴力活用傾向を受け継ぐアフリカン・アメリカンの武装集団「ブラックパンサー党」は、1969年のハーレム・カルチュラル・フェスティバルなどアメリカ黒人のためのライヴで警護を担うなど、1960年代の公民権運動は決してキング牧師だけが一手に担っていたわけではなく、より複雑なネットワークがあったことが知られている。
10註:1986年発売の彼女の3rdアルバム。このアルバムから、今に至るまでのジャネット・ジャクソンのパブリック・イメージが固まったとされる。
11ユニバーサル・ピクチャーズ公式. 2021-10-29. 『リスペクト』特別映像(A look inside) <2021年11月5日(金)公開>. https://www.youtube.com/watch?v=j7xRMWygSyY (2021-11-27 accessed).
12高橋芳朗 and ジェーンスー. 2021-05-07. [Podcast] 特集: ヒップホップソウルの女王、メアリー・J.ブライジの傑作ドキュメンタリー『マイ・ライフ』. https://music.amazon.co.jp/podcasts/b87137e8-542f-4d39-9404-ae9feff33e94/episodes/c8d2cbf7-20a9-4070-b52a-76925ee368cd/%E7%94%9F%E6%B4%BB%E3%81%8C%E8%B8%8A%E3%82%8B%E6%AD%8C-%E7%89%B9%E9%9B%86-%E3%83%92%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%9B%E3%83%83%E3%83%97%E3%82%BD%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%8E%8B%E3%80%81%E3%83%A1%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BBj-%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%B8%E3%81%AE%E5%82%91%E4%BD%9C%E3%83%89%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%80%8E%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%95%E3%80%8F (2021-11-27 accessed).
13北米で著名なオーディション番組。ジェニファー・ハドソンはこのオーディション番組出身。このあたりの話を特に詳しく語っているのは、Spotifyで配信されている「ブルース&ソウル リズム・トーク」における2021年11月のアレサ・フランクリン特集(全4回)である。そちらの林剛によるアレサ・フランクリン論も参照されたい。https://open.spotify.com/show/0Tw9xwLB2w50fXmNj0DdlS?si=8984d1c93c08489d
14デイビッド・リッツによる評伝『リスペクト』は、アレサが制作に直接関わっていないため、「自伝」とは言えない。アレサの「自伝」は、1999年の From These Roots が該当する。これもデヴィッド・リッツが書いたものであるが、リッツによれば、この本に掲載できなかった、アレサが語り落としている内容が多く残っている事実を当時から惜しんでいたことを、評伝『リスペクト』のまえがきで語っている。(リッツ 2014=2016: 27-29)
152017年に、ハリウッドの映画プロデューサ、ハーヴェイ・ワインスタインによる度重なる性暴力に対する抗議運動がSNSを中心に活発となった。その結果、女性たちが受けてきたセクシャル・ハラスメントについて「私も(被害に遭ってきた)」と声を上げる行動は #MeToo というハッシュタグに収斂していった。日本および日本語圏においては、フリージャーナリストの伊藤詩織が2017年に男性から受けた準強姦被害を告発し、その訴訟についての報道が続く中で、#MeToo 運動の存在も徐々に知られるようになった経緯がある。
16たとえば映画内では、1970年代の黒人および女性の人権運動を推進した人物として知られるアンジェラ・デイヴィスが逮捕されたことを心配するアレサ・フランクリンの様子が描かれている。このシーンを映画『リスペクト』が取りこぼさなかったということは素晴らしいことで、まさに高橋芳朗が指摘するアレサの【アクティビスト】としての立場を尊重したシーンであったことが言える。アンジェラ・デイビスについては、浅沼優子. 2021. 『アンジェラ・デイヴィスの教え 自由とはたゆみなき闘い』河出書房新社. が今年(=2021年)に出版されている。下記に関連リンクを紹介しておく。(河出書房新社公式紹介記事:浅沼優子. 2021-03-02. 今アンジェラ・デイビスを知るべき理由. https://web.kawade.co.jp/bungei/11051/ (2021-11-27 accessed). )(Amazon URL
17C-SPAN. 2018-08-16. [YouTube] Aretha Franklin sings at President Barack Obama’s 2009 Inauguration (C-SPAN) https://www.youtube.com/watch?v=QW7n8hklwsk (2021-11-27 accessed).
18マッスル・ショールズのフェイム・スタジオに入り初めてのレコーディングを開始した時、テッド・ホワイトの書いたものをバンドメンバーが低評価を与えた直後に、アレサがキーボードを弾いてアレンジを開始するところがここで言及されている箇所と思われる。
19キング・カーティス&キングピンズとの共演により実現した。2006年には、キング・カーティス&キングピンズの音源と合わさった完全盤が再発されている。(Spotify URL
20Eurythmics. [Spotify] [Album] Be Yourself Tonight. https://open.spotify.com/album/2tbXCl8en5ZDVnHIk1OZGI?si=6PgfjcTyQCmSLIsmFiVSvA (2021-11-27 accessed).
21Discog のクレジットより。https://www.discogs.com/ja/release/17217835-Aretha-Franklin-Whos-Zoomin-Who (2021-11-27 accessed).
221970年代に出てきた、従来のソウルシーンより都会的で洗練されたサウンドが特徴のソウル楽曲群のことをこう呼ぶことがある。担い手としてはスティーヴィー・ワンダーやダニー・ハザウェイ、ロバータ・フラックなどが知られる。以前 #FalettinSouls でもニューソウルの小特集を組んだ
231980年代にR&Bの新ジャンルとして言われるようになったジャンル。伝統的なソウル・ファンクおよびディスコともまた異なったビートをもつものとして共有されていた。同時期のものとしては、ティディ・ライリー等が流行らせた「ニュージャックスウィング」といったジャンルも知られている。
24この一連の、1980年代のコラボを列挙しながらアレサ・フランクリンの音楽家としての柔軟性・対応力について論じた高橋さんの仕事はすばらしい。
25精確には「評伝」。リッツ2014=2016
26おそらく(リッツ 2014=2016: 47)の記述を指していると思われる。幼少期の頃からアレサがゴスペルコードを弾きこなしており驚嘆したというエピソードが引かれている。
27(リッツ2014=2016: 170)からの記述が該当する。
28ブルース・ブラザーズの映画および彼らの音楽的出自については、#FalettinSouls s2eX06 特集: ブルース・ブラザーズと1970s末の“保守”ソウル・シーン (2021-06-18)で詳しく解説した。
29彼女たちは自分自身のことを為している、と訳せる。
30ここ、めちゃめちゃ感動しました。ジェーン・スーさんありがとう。「隣のミヨちゃん」の話は忘れません。