#FalettinSouls 2021-01-29 特集:星野源はいかにしてネオソウルをわがものとしたか?

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  1. 星野源. 湯気. 2011.
  2. 星野源. ダスト. 2013.
  3. 星野源. Night Troop. 2014.
  4. 星野源. Soul. 2015.
  5. 星野源. Dead Leaf. 2018.
  6. 星野源. The Shower. 2018

【08:00】

おはようございます。1月最終日ですね。来週もう2月か、ひえー。週末ゆっくりお風呂に浸かったりしてゆきましょう。

金曜日はいつも単一ミュージシャン6曲縛り、今日は星野源です。星野源だけどSUNも恋もアイデアもドラえもんもうちでおどろうもございません! この並びを編んだことの意図、星野源ファンに判定してほしいですね。2021-01-29 金曜日、「星野源はいかにしてネオソウルを我がものとしていったか?」特集です。解説は夕方ー。

【19:00】

そんじゃ星野源特集はじめるよー #FalettinSouls

01. 星野源. 湯気. 2011.

もはや飛ぶ鳥を落とす勢いどころか、『おげんさんといっしょ』や、『DEATH STRANDING』のインゲームに三浦大知と共にまるごと収録など数々の実績を刻み、もはや日本を代表するスター級シンガーソングライターの1人となり、飛んでる鳥の方が少ないくらい。そんな星野源さんの話です。

星野源さん、2010年にアルバム出してデビューしました。そしてその直前まではSAKEROCK というインストゥルメンタルバンドの中心人物でもありました(Spotifyにはアーティスト登録および主要音源はなし、ただし「サケロックオールスターズ」名義の企画はあり)。

ちなみにSAKEROCKのメンバーの中には浜野謙太もいます。その後の在日ファンクのリーダーです。つまりSAKEROCKから星野源と浜野謙太、日本のソウルミュージック最新形態を背負う男と、日本において歌もの古典ファンクを貫徹せんとする男【2020-12-15 オーセンティックファンク特集】とが出てきたというわけですね。振り返るとけっこうアツいバンドですね。Spotifyでは扱いきれないですが、山下達郎や大瀧詠一やSMAPと合わせて円盤掘って欲しい。私も掘りたい。

さてこの一曲めなんですが。実は振り返ると2010年から2012年までの星野源の音源って、今の星野源(2015年『Yellow Dancer』、2018年『POP VIRUS』)のようなトラックメイクに、いまいち辿り着き切れてないように聴こえます。

すでに細野晴臣などファンキーサウンドの先達〔※2021-01-21 はっぴいえんど以後特集〕を味方につけながら、ソロの初期がおとなしめ。これは聴きなおして正直意外でした。好きなサウンドの在処は初めから定まってるようにも聴こえますが、ここから2020年までの10年の間に化けに化けて、いまや押しも押されぬ日本の大英雄になる過程は、ちょいと想像しづらい。

しかし、にもかかわらず(と勝手にケチつけておいて何だよと思われそうだな)、この試行錯誤の最中のサウンドと合わせて歌われる情景は、すでにほぼ完成されてます。星野源は「ほとんど気体と区別のつかない液体・固体を詩の俎上に載せて歌う」のが極上にうまいんですよ。

湯気の中は 日々の中
雨雲になって
いつの間にか 部屋の中
しとしとと雨が降る
なにか茹でろ 飯を食え
するとなぜか 僕の中
とくとくと目から水が出る

星野源. 湯気. 2011.

(僕らの部屋の炊飯器の)湯気が、雨雲となり、雨となって流れ落ち、僕らの精神に降りかかり、時に僕らの汗や涙(もしかしたら鼓動により押し出される血液)となって、それらがまた水蒸気となり天上へ還る……という、星野源なりの流儀でのワークソング、群集のための歌が、すでにこの時に、完成しきっているんですよね。

そこに注目しながら、2曲めいってみましょう。

02. 星野源. ダスト. 2013.

確かここにはハマオカモト(OKAMOTO’sで紹介済)がベースで起用されてます。この時星野源がつけた注文に、今回の特集の鍵があります。ちょっとアレンジの様子が「湯気」より一段階深化してますよね?

その後5年くらい『Voodoo』は眠りにつくことになるのですが、去年の年末頃、僕が参加させてもらった星野源さんのシングル“ギャグ”のカップリング曲“ダスト”のレコーディング前に、『Voodoo』の冒頭曲“Playa Playa”が源さんから参考音源として送られてきて、リズム・セクションはこういう感じでやりたいと。〔強調引用者〕ディアンジェロか……と思いながらも、音楽嗜好も幅広くなったいま聴いたらどう思うんだろうと、ふたたび眠らせていた盤を引っ張り出して聴いてみたら……ヤバーイ(笑)! ホント音楽ってタイミングですね。60s〜70sのものが好きな僕にとって、その時代のソウルを受け継ぎつつも、ヒップホップなどを通過している時代だからこその音、それがネオ・ソウルというものだと思うんですが、そこがツボでした。

ハマ・オカモト. 2013. 「第27回: ディアンジェロ」『ハマ・オカモトの自由時間』2013-10-20. (https://tower.jp/article/series/2013/12/11/b1373 2021-01-29取得.)

2013年にハマ・オカモトがディアンジェロと星野源について論じたこの記事によれば、星野源は「ディアンジェロみたいにやりたい」ということで注文をかけていた事実があるようです。

そしてそう、既にお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、「ダスト」はファンク&ソウル史的に言えば、ディアンジェロ『Brown Sugar』『VooDoo』および第一世代ネオソウルを素直にフィーチャーしてるんですね。

つまり、「湯気」の頃に「たぶんこっちに行きたい」と思ってた星野源さんが、このころを境に明確に「第一世代ネオソウル」サウンドと向き合い始めていることが傍証からも、音源自体からも、確認できるんですよね。そして案外、ディアンジェロ的なものに取り組んでる邦楽ミュージシャンはそう多くない。

ところで歌詞についてみると、「ダスト」でも粒子の表現がうまい。

ああ 刻まれた思い出は
青へと消えていく
ダストは空に 召されぬままに
近所に
〔中略〕
切り捨てたもの 見捨てた
煙 空気に
〔中略〕
ああ 人もそれは同じか 炎で
ああ 羽をつけて飛ぶのさ
光の中へと
〔中略〕
息を吸い込め
風を受け取れ
塵になる日まで

星野源. ダスト. 2013.

「湯気」が天と水と肉とのあいだのH2Oの循環の話なら、「ダスト」は火と風の間で行き場を失っている塵、煙、光の話といえるでしょうか。エレメントの選択基準については、星野源流の何かがあるのかもしれないですね。

03. 星野源. Night Troop. 2014.

ここからはサクサク行きます。

さっきみたいな属性読みはできませんが、ディアンジェロ再現の続きとして聴けます。定期的にこのサウンドの方向性を探究し続けていることが伺えます。

04. 星野源. Soul. 2015.

この2010s前半の折り返し地点の音です。この曲ではエレクトリック・ピアノやストリングス隊が控えめながらも鳴り始め、間奏には笛まで入ってくる(この笛何の楽器だろう? オカリナ?)。

〔注:フルートでよかったようです。フルートにしては音がふっとい感じするけど、そうなのか……詳細なレビューは (黒田隆憲 2015)[1]黒田隆憲. 2015. 「一躍お茶の間の存在となった星野源。音楽家として何がすごい?」『CINRA NET』(https://www.cinra.net/review/20151201-hoshinogen , … Continue reading参照。〕

歌詞についても引いておきます。

海を見た日の 神は幼い
寄せるわ そう 波の味
浮かぶ枯葉 如月 夕陽の向かい
兎が そう 跳ねるだけ
おお 此処から
おお 世界が
君を見た日の 恋は幼い
日向に そう 咲くように
浮かぶ言葉 誘い 林檎の誓い
木陰に そう 座るだけ

星野源. Soul. 2015.

歌詞も、古事記のオノゴロ島を出産する伊弉諾・伊弉冉〔イザナギ・イザナミ〕の神話のようであり、聖書の創世記のようでもあり、属性の盛りが凄い。このへんは2019年に、おようさんという方が読み込もうとされていますね。

およう. 2019. 「星野源『Soul』に顕れる2つの神話」 2019-01-06. (https://note.com/hokoo5/n/n6c69d9fe0ff3 , 2021-01-29 取得.)

また、YELLOW DANCER 特設ページにもしっかり以下のようなコメントがあることを見つけました。

2011年にリリースした1stシングルのカップリング曲「湯気」から、コツコツと進めていた「自分の趣味である(ソウルやジャズ、R&Bやジャンプブルースなどの)ブラックミュージックと、己の音楽性の融合」を、全面的に追及〔注:原文ママ〕したアルバムになりました。ブラックへの憧れと共に、日本情緒あふれるポップスを目指した結果、「イエローミュージック」と呼べそうな楽曲たちが生まれました。体だけでなく、心も躍るようなアルバムができたと思います。

星野源オフィシャルサイト「YELLOW DANCER」特設ページ (https://www.hoshinogen.com/special/yellowdancer/ , 2021-01-29取得)

ちなみにこの中で「湯気から……」と本人が書いてるのをいま(2021-01-29, 20:04)みつけました。今回の企画の答え合わせじゃんね? はっはっは、これ3日前に編んだんだぞ。どうだえっへん(?)。

05. 星野源. Dead Leaf. 2018.

さて『YELLOW DANCER』からさらに3年後、もうだいぶ“仕上がった”星野源流ネオソウルが聴けます。音数の少なさも堂々たるディアンジェロのオリジナルにだいぶ迫ってる。スイング感も再現度すごいですね。日本語で歌われるソウルとしても、シンプルに素晴らしい。

立ち尽くした 冷えたビルが
猿みたいに 夕陽見てた
行き交う人は こうべを垂れた
電波真綿 繋がれた
視えない波は 雑踏の中
意思運ぶ 真似した
〔中略〕
これはさ 愛だ
ああ もっと似合った
言葉がいいけど
一番 近くて古い言葉
いつまでも 落ちないな
あの枝で 枯れた葉

星野源. Dead Leaf . 2018.

「立ち尽くした冷えたビルが」→「猿みたいに夕日見てた」という無生物主語の一文から、同様に猿めいた群衆の生活を見下ろしもしていて。さらに電波を飛ばす最先端機器を扱っているのに、うまい言葉が見つからない、まるで猿みたいじゃないかと思ってしまうような不甲斐なさの中で、一人の人間として「愛」の一単語よりマシな言葉を手繰っている……ワザマエ!

この曲、その3年前の「Soul」で人間たちの、言語があったかさえ定かでない段階の神話的なはじまりを歌ってるからこそ、俗世中の俗世における言葉のむずかしさを歌ってる「Dead Leaf」が活きてくるという、不思議なつながりを感じますね。

そんな読みを傍証できそうな箇所を、いまちょうどみつけました。

「Soul」の歌詞の序盤、月と太陽のあいだの波間で、枯葉が浮かんでるんですよね。それが「Dead Leaf」に至って、「愛という、いつまでも落ちない古びた言の葉=枯葉(Dead Leaf)」として漂着してる。Soulの枯葉とは愛=生命の原初形態だった? 深読みかしら。

浮かぶ枯葉 如月 夕陽の向かい
兎が そう 跳ねるだけ

星野源. Soul. 2015. (再引用)

一番 近くて古い言葉
いつまでも 落ちないな
あの枝で 枯れた葉

星野源. Dead Leaf . 2018. (再引用)


さて、「星野源がディアンジェロ含むネオソウル第一世代をいかにして我がものにしてきたか」特集。サウンドの話に止まるはずだったのに歌詞もそれに呼応するかのように星野源の歌詞読み解きが、ネオソウルの葉脈に沿って布置されてるようにも思えてきて、ゾクゾクしてきたぞ(これ今日、2021-01-29に、Playlistを事前に準備した以外はすべていま即興で書いてますからね?)

06. 星野源. The Shower. 2018

最後です。もう3年前なので最新ではないですが、素晴らしい音源です。これは星野源による『ドラえもん』新OPのカップリング曲です。

……ど,ど,ドラえもんのシングルにこんなdopeなトラックが!?

マジかよ、一桁台で今のドラえもん見てる世代がみんな2030年代に星野源の薫陶を受けた #ネオソウルネイティヴ になっちゃう……(何言ってんの?)。

ともあれこの曲、2011年「湯気」から「Soul」「Dead Leaf」を経由して再度立ち戻ってきたエレメントの歌でもありますね。

全編漢字抜きの歌詞にはこうあります。

かなしみはあめのような
シャワーのなか せなかをなでたわ
せつなさは あいのような
けむりのなか

星野源. The Shower. 2018

これ、前2行が「湯気」で後2行が「ダスト」ですね? 自分のネオソウル・チャレンジを総括してるよ! 初めから終わりまで弱めのファルセットで! こういうところもいかにもネオソウルっぽい!

水の粒子と火の粒子に囲まれているという皮膚感覚を通じて、星野源は世界を世界として立体的に知覚して(も)いる……この視座が、The Shower では手際良くまとまっています。2010s星野源のネオソウルチャレンジ・シリーズは、もはやディアンジェロ等への憧れから、彼自身のモノになってますね。本当にお見事!

そんなわけで、今回は星野源さんが、R&B史の一時代を築いた「(第一世代)ネオソウル」、特にディアンジェロ的なものを、ソロ開始後からの星野源がどう憧れ、独創的に昇華しようとしてきたかを追跡しました。もう誰もが知ってる人気アーティストにもこうやって析出したくなるマイナーな観点は沢山ありますね。

おしまい。土日はおやすみ、月曜日はノープラン(音源も揃えてません)。休日中にたくさん音楽聴いて準備しときますね。2021年02月もファンキー&ソウルフルをご一緒に充填してまいりましょ。それでは約2ヶ月連続運営中のエクリチュールラジオ番組、今月おしまい。さよならさよならー。

脚注一覧

脚注一覧
1黒田隆憲. 2015. 「一躍お茶の間の存在となった星野源。音楽家として何がすごい?」『CINRA NET』(https://www.cinra.net/review/20151201-hoshinogen , 2019-01-29取得)

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