#FalettinSouls s2eX04: 匿名ポストパンク・ファンク集団 “Sault” とUK版BLM (Black Lives Matter)

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1. Sault. Up All Night. 2019.
2. Sault. Smile And Go. 2019.
3. Sault. Red Lights. 2019.
4. Sault. Don’t Shoot Guns Down. 2020.
5. Sault. Free. 2020.
6. Sault. Son Shine. 2020.

【2021-06-04 朝】

おはようございます。全国的に爆弾低気圧みたいですが皆さん生きておられますでしょうか。私は湿気でもうだめです。#FalettinSouls 金曜単一ユニット特集回、今日採り上げるのは第4回(s2eX04) 匿名ポストパンクファンク集団Sault(ソー)です。

音源がここ約2年に集中してますね。解説は夜〜。

【夜】

♬♬♬♬♬♬♪♬

一説によれば、特定の携帯だと音符はうんち💩 になるらしいと聴きましたが、最近使っている本編開始の合図はうんちになってたりするんですかね。こんばんは。trickenがお届けするTwitter音楽番組 #FalettinSouls 単一ユニット特集の金曜回をお届けします。近畿は一時的に晴れましたね。

今日は匿名音楽集団 Sault (ソー)をお届けします。とはいえ今週は(本当に忙しかったのと、『聖戦の系譜』[1]『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』(FEシリーズ第4作;任天堂 1996)が2021-05-26 付でNintendo Switch Online … Continue readingにカルチャーショックを受けて忙しかったので)調べる時間が取れてないので、PCで調べながら話していくことにします。2000時まで喫茶店にこもってます。

1. Sault. Up All Night. 2019.

Sault (ソー) 。最初見た時は「ソールト」と読んでしまいましたが、ソーでいいらしい。イギリス(UK)のユニットなんですが、なんと匿名です。今まで出したアルバムは『5』『7』それからタイトルなしの2枚。

名義なしの2枚は『(Black is)』と『(Rise)』という仮タイトルがついていて、それがSpotifyで聴けます。Saultは、アルバムについては、2019年と2020年に出たその4枚がすべてです。1曲めのこれは『5』から。海外の「正」みたいな刻みがアルバム表紙の中央についてますね。

ちょっとDiskUnionの説明読んでみましょうか。

一言では形容できない完全ジャンルレス//グループの存在自体がミステリアス//あまり人にはオススメしないで自分のモノにしておきたい//ESGなど、当時のニューヨークのポスト○○みたいな雰囲気と洗練されたロンドンのACID JAZZを合わせたような

(Disk Union 2020)

次に、英国The Guardian氏のレビューをみましょう:

ESG風のpost-punk funkと80年代初期のboogie funk、そしてneo-soulに近いものの間をジグザグに行き来する特異な道を歩んでいるが、どのカテゴリーにも当てはまることなく、単純なオマージュとして聴こえてくるわけでもない、そんな素晴らしさがある”

(Pendris 2019)[2]Petridis, Alexis. 2019-12-20. Sault: 5 / 7 review – intriguing grooves from a mystery funk machine. https://www.theguardian.com/music/2019/dec/20/sault-5-7-review-forever-living-originals … Continue reading

このPetridisさんの褒め方が本当にぴったりくる。自分は正直、Moonchild系のネオソウル第二世代にはしっくり来るところがあまりないのですが、Saultについてはギリギリ「あ、ネオソウルでしっくり来なかった所を乗り越えて迫ってくるものがある」と思えるんですよね。

いわばネオソウル2.x世代、あるいは2.22世代[3]新劇エヴァ風というか、しかしそれにしてはアフロビート的な刻み・パーカッションの取り入れの仕方がエレガントでもある。英国ソウル内のムーヴメントはかなり錯綜していますが、Saultはさらにその外から何か引っ張ってきてそうな印象さえ受けます。

2. Sault. Smile And Go. 2019.

次いってみましょう。2曲目。『7』から取ってきました。1曲目がニョッキニョッキしたパーカッションの刻みで進行していましたが、これはだいぶヴォーカル要素がハッキリしてますね。Saultの曲の中ではだいぶ聴きやすいと思います。

Saultの個々の曲の特徴は、「短い」ことです。長くても3分くらいで、4分を超えることはめったにない。中には1分以内で終わってしまうトラックさえある。けれど、モチーフの提示としては十分すぎると思えるくらいの長さがそれぞれの曲で確保されてもいます。

FalettinSouls は、「自分がその個々の曲の背景を思って真剣に聴ける1日の下限がそのくらい」と思って6曲で切ってるんですが(そうだったの?)、Saultについてはもう2曲くらい選びたかった気がしないでもありません。なんせ短いので。でも6曲の漏斗のパワーを信じて厳選いたしましたよ。

このSmile And Go の、サビが終わった後のベースがぶいぶい言ってる後の区切りで歌われる「Bidi-Bidi」と聴こえるところが、かわいいですよね。[4]Twitter投稿時は”Bili-Bili” と言ってしまったが、正式にはBidi-Bidiのほうらしい。個人的にはこの曲は「Saultのビリビリ・ソング」と勝手に覚えています。

3. Sault. Red Lights. 2019.

先程のレビュー引用の中で「ESGライクな」と出てましたが、ESGって誰のことでしょうか。ESGは1978年に米国で活動していた、ポストパンク系のファンクバンドと呼ばれているグループで、コアメンバーは女性の姉妹たちでした。

そしてESGは、《Factory》レコードと契約して活動をしたんです。ファクトリーレコード、先週でてきましたね。[5]#FalettinSouls s2eX03: A Certain Ratio: “冷徹なファンク”はなぜマンチェスターからやってきたのかそう、1980sのUKマンチェスターでポストパンク/ニューウェイヴの渦を作ったレーベルです。ESGの形容に「ファンク」だけでなく「ポストパンク」も出るのはその流れもあるわけです。

自分はESGとSaultとA Certain Ratio (そしてファンクバンドではないけれど、The New Order) をまったくべつべつに聴いてきたわけですけど、UKのR&Bシーンを読む際に「ポストパンク」という文脈の一柱が、とても重要なものとしてあるということを、先週から今週にかけて改めて認識しています。

曲の話をあまりできてないですね。Red Lights はいかにもネオソウル(第一世代寄り)ぽいつくりですよね。[6]#FalettinSouls 2021-02-04 Neo Soul, the 1st Gen.言い換えると、星野源が新作シングルのB面にもってきても違和感のなさそうなドラムループをつくってますよね。[7]#FalettinSouls Season1; 2021-01-29 特集:星野源はいかにしてネオソウルをわがものとしたか?同時に現代系ビデオゲームのサントラBGMのようなオシャレさもある。

歌詞も閉塞感を感じさせるもので、歌い方含めてとてもいいです。

毎日が遅く感じるのは
舟に乗り遅れたから
今はどこへゆこうと
赤信号が”

Sault. Red Lights. 2019. 〔引用者による私訳〕

4. Sault. Don’t Shoot Guns Down. 2020.

4曲目です。ここからUntitled2枚の紹介になります。最初に言った通り、Saultは匿名のポストパンク・ファンクバンドでして、誰が演ってるのかとか、誰がプロデューサとして立ち回ってるのか、詳しいことはわかりません。

UKのジャズ・ファンク系の同業者は絶賛していますが、「絶賛してるなら奴じゃないのか」とか推理が行われているらしいほどです。でも唯一確かなことがあります。それは Sault が、総意として、2020年を中心に起きたBlack Lives Matter 運動に対して、支援者の立場で社会参画しているということです。

この曲は “撃つな、その銃口を下げろ (Don’t shoot guns down)” と何度も繰り返し歌っています。それは怒鳴っているようでもあり、懇願しているようでもある。そして最後には “差別野郎の警官が (Racist, Polisman)”と”私は潔白だ(Don’t shoot, I’m innocent)” が被る。この2分に込められた怒り!

撃つな、その銃口を下げろ
差別主義者の警官が
やめてくれ、私は無実だ

Sault. Don’t Shoot Guns Down. 2020. 〔引用者による私訳〕

最後の “Don’t shoot, guns down” & “Racist, policeman!” のところのエフェクト、まるで路地裏でそう叫んだまま撃たれる直前かのような悲愴さが感じられて、本当に切実な話なんだよこれは……と思わされます。#FalettinSouls は、この世界のもう一つの片隅からBLMを支援致します。

このアルバムが出た2020年の末ごろ、BBCのRaido 6 Music が、Saultの 『Untitled (Black is)』を年間ベスト・アルバム1位に選出したそうです(渋谷 2020)[8]渋谷陽一. 2020-12-05. BBCのRadio 6 … Continue reading。注目度の高さが推し量れる記録ですね。

5. Sault. Free. 2020.

「あなたのやり方はきらいじゃないけど、ヒーローはいらないの」と繰り返す歌です。ヒーローぽく振る舞うことによる自己犠牲から自由になってよ、とやんわり指摘しているのかもしれない。この曲はドラムとキーボードの噛合がとても好きですね。

2020年ごろの活動を検索したら、Saultの情報が少し出てきました。

クレオパトラ・ニコリック、ディーン・ジョサイア・カヴァー(別名インフロー)、メリサ・ヤングから成るロンドンの3人組で、それぞれいろいろなミュージシャンの仕事をしてきた

小川充. 2020-12-21

小川2020 [9]小川充. 2020-12-21. Album Reviews: Sault Untitled (Black Is) and Untitled (Rise). Ele-king. http://www.ele-king.net/review/album/007950/ (2021-06-04 accessed).によれば、”ジャイルス・ピーターソン曰く、2020年版のマーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン』だそうだ。” と、ブリットファンク・リヴァイヴァルの中心人物であるジャイルスからも、この時代のUKソウルを象徴するアルバムとしてUntitled *2 は評価されているらしい。

Sault をほとんど前情報なしに聴き通した時の印象はそれに近いものを確かに感じていましたが、英語圏での評価は想像がついていなかった。BLMは一応北米の運動という括りですが、UKにも多くのアフロ系の人や差別に怯える人が暮らしています。UKからもBLMと紐付いた作品が出て評価されるのは当然か。[10]BLMから観たSaultの評価については、以下がさらに詳しい:高見展. 2021-02-08. … Continue reading

Black is について、Saultは以下のような声明も出しています:

私たちは、黒人として、また黒人の血を引く者として、人生をかけて戦っているこの時を記念して、初の「Untitled」アルバムを発表します。
安らかに、 ジョージ・フロイド。そして警察による残虐行為や制度的人種差別に苦しむすべての人々にも、安息が訪れんことを、願います。私達はひとつだ。

Lizzie Manno / Paste 2020-07-22 [11]Lizzie Manno. 2020-07-22. Sault’s Album-of-the-Year Contender Embodies Black Excellence and Justified Fury: The mysterious U.K. soul group unveiled Untitled (Black Is) last week, which joins RTJ4 … Continue reading

最後の ”We are focused.” は、「私達はひとつだ〔寄り集まって、いま団結している、そのように考えている〕」というくらいの意味合いが濃厚に入っていそうだと思いましたが、もしかしたら直前のRIPの祈りをただただ念じているという意味合いだろうか。訳が確定できませんでした。

6. Sault. Son Shine. 2020.

解説は長めでしたが、Spotifyリストの再生時間としてはあっというまに6曲目といったところでしょう。『Untitled (Rise)』 収録の曲です。こっちのアルバムは怒りや嘆きよりダンサブルな祈りの方が多いですね。手を合わせて祈っているアルバムジャケットだからというだけでもなく。

ここ暫く、この番組ではいわゆるシティポップ系の音源も(R&B文脈を極東において上手に取り入れたシーンのひとつなので)重視していますが、この Son Shine はそういうシティポップ系と共鳴するようなサウンドメイクをしていますね。

おとなしめの、限りなく8ビートの構えに近い16ビートのドラミングの上に、エモーショナルなワウギターと湿ったエレクトリック・ピアノの音、そしてエフェクトの入った女性ヴォーカルの声が載る。歌うのは息子(Son)への愛、そして私達の痛みが決して次世代にとって無駄ではないこと。

なんかもう、オタク的な言い回しでいうと「文脈〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」て感じがね、しませんか。悲しい事件やつらい時事はつづいていますが、この今の時代、私はR&B好きでよかったと思いますよ。人間の崇高さに出会える文化領域のひとつですよ、いまのR&Bは。

Sault 、こんなメッセージ性の強いアルバムを匿名で出しちゃって(一応メンバーはバレてきているようだけど)、この次の作品がどんなものになっていくか、その巧みなクロスオーヴァーぶりも、今の時代に向けて放たれるメッセージについても、とても楽しみですね。今特集すべき音楽集団だと思いました。

これで今日の #FalettinSouls S2eX04 “Sault” 特集はおしまいです。次回は来週月曜 2021-06-07 に s2e07、そして来週金曜2021-06-11の努力目標は……こないだ映画をみてきた「アレサ・フランクリン」ですね! できるかわからないけど、頑張る!

追記:Saultのメンバーについて

この回が終わったあと、小川2020(前掲)の情報をもとに調べておきました。

Cleopatra Nikolic (Cleo Sol) / Vo.:
クレオパトラ・ニコリック(別名クレオ・ソル)。2000年代からキャリアを始めたが一時休止。その後Inflo(後述)と共にキャリアを再開。Sault以外の活動ではソロ名義アルバム Rose in the Dark (2020) もInfloと共作で作っている。基本的にはInfloの自主レーベル Forever Living Originals から作品を出している。[12]Andy Kellman による Allmusic 記事. https://www.allmusic.com/artist/cleo-sol-mn0002448381/biography (2020-06-06 accessed).

Dean Wynton Josiah Cover (Inflo) / Prod. :
ディーン・ウィントン・ジョサイア・カヴァー(別名インフロー)。UKの音楽シーンでは名の知れたプロデューサ・作曲家であり、近年ではMichael Kiwanuka のプロデュースを手掛けたことで知られる。Forever Living Originalsという自主レーベルを持つ。おそらくSaultの曲の大半はこのInfloによって手がけられている可能性が高い【要検証】。[13]良い出典を探してみたが、まとまった情報は作曲情報のみだった。

Melissa Young (Kid Sister) / Vo., MC, Rap :
メリッサ・ヤング(別名キッド・シスター)。イリノイ州シカゴを拠点に活動するMC/ラッパー。[14]ワーナー・ミュージック・ジャパン. nd. https://wmg.jp/kid-sister/profile/ (2021-06-06 accessed).

他にも、Infloの活動を通じて知り合った多くのミュージシャンが参加していることがわかってきているようだが、依然としてその全容は不明のもよう(2021-06-06現在)。

脚注一覧

脚注一覧
1『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』(FEシリーズ第4作;任天堂 1996)が2021-05-26 付でNintendo Switch Online のスーパーファミコン名作コレクションに再録されることに。未験の状態でやったら、新旧のFEと勝手が違って色々驚いていました。
2Petridis, Alexis. 2019-12-20. Sault: 5 / 7 review – intriguing grooves from a mystery funk machine. https://www.theguardian.com/music/2019/dec/20/sault-5-7-review-forever-living-originals (2021-06-04 accessed). ;引用者による訳
3新劇エヴァ風
4Twitter投稿時は”Bili-Bili” と言ってしまったが、正式にはBidi-Bidiのほうらしい。
5#FalettinSouls s2eX03: A Certain Ratio: “冷徹なファンク”はなぜマンチェスターからやってきたのか
6#FalettinSouls 2021-02-04 Neo Soul, the 1st Gen.
7#FalettinSouls Season1; 2021-01-29 特集:星野源はいかにしてネオソウルをわがものとしたか?
8渋谷陽一. 2020-12-05. BBCのRadio 6 MusicがSault(ソー)のアルバムを年間1位に選出した。フリート・フォクシーズやディランをおさえての1位は凄い。明日の番組で最新作を紹介したい。その前にこの曲をチェックして欲しい。. 渋谷陽一の「社長はつらいよ」. https://rockinon.com/blog/shibuya/196839 (2021-06-06 accessed).
9小川充. 2020-12-21. Album Reviews: Sault Untitled (Black Is) and Untitled (Rise). Ele-king. http://www.ele-king.net/review/album/007950/ (2021-06-04 accessed).
10BLMから観たSaultの評価については、以下がさらに詳しい:高見展. 2021-02-08. まるでUKブラック・ミュージックのカレイドスコープ――謎のR&Bユニット、ソーはなぜ、たった2年で早くも伝説となり得たのか? その全貌に迫る!. rockinon.com洋楽ブログ. https://rockinon.com/blog/yogaku/197562 (2021-06-06 accessed).
11Lizzie Manno. 2020-07-22. Sault’s Album-of-the-Year Contender Embodies Black Excellence and Justified Fury: The mysterious U.K. soul group unveiled Untitled (Black Is) last week, which joins RTJ4 as a revolutionary soundtrack to 2020. Paste. https://www.pastemagazine.com/music/sault/sault-untitled-black-is-review/ (2021-06-04 accessed).
12Andy Kellman による Allmusic 記事. https://www.allmusic.com/artist/cleo-sol-mn0002448381/biography (2020-06-06 accessed).
13良い出典を探してみたが、まとまった情報は作曲情報のみだった。
14ワーナー・ミュージック・ジャパン. nd. https://wmg.jp/kid-sister/profile/ (2021-06-06 accessed).

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