#FalettinSouls s2eX07 東京事変 ファンク・サウンド選

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東京事変. 天国へようこそ. [2010] 2011.
東京事変. ミラーボール. 2007.
東京事変. 某都民. 2007.
東京事変. 能動的三分間. 2010.
東京事変. 心. 2012.
東京事変. 毒味. 2021.

【2021-06-25 朝】

おはようございます。暫く梅雨っぽくない天気が続いてありがたかったですが、まだ梅雨明けはしてないんでしたっけ。梅雨、明けてほしいですねー。さて今日は暫く休みなしで続いている金曜の単一ユニット特集 s2eX07 本日は椎名林檎の別プロジェクト「東京事変」です。

FalettinSouls がファンク&ソウル文脈で選ぶ6曲はこれ! 素で選んだ結果、わりと浮雲色が強いかもしれない。

解説は夕方(か土曜)。

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【夕】

金曜単一ユニット特集、第7回( s2eX07)は東京事変です。プレイリストはfleetにぶらさげているのでそちらをご覧ください。先程RTもしました。

1. 東京事変. 天国へようこそ. [2010] 2011.

東京事変は、シンガーソングライターの椎名林檎が、初期アルバム3部作を出した後に別のプロジェクトとして立ち上げたバンド・プロジェクトです。2003年から2012年までを第一の区切りとして暫く解散扱いとなっていましたが、2020年に復活、今に至ります。

自分は椎名林檎は初期三部作の時期、特に『勝訴ストリップ』や「真夜中は純潔」(東京スカパラダイスオーケストラとのコラボ曲ですね)などには思い入れはあるんですが、東京事変の楽曲はシングル単位で耳にするくらいでした。

けれど、先日最新アルバム『音楽』を聴いていたら「あっ、やっぱりまるごと聴かないとダメかも」と思って、記憶から脱落してる音源含めてまるごと聴き直したわけでした。さて、東京事変はR&Bはあくまで得意技の一つであり、R&Bばっかりやってるわけではありません。

なので、今回スタジオアルバムを一通り聴いて残した6曲は、この選曲企画集のコンセプトである「東京事変におけるファンク&ソウル色の強い6曲」を繋げたものです。泣く泣く断ち落としたものもあるんですが(「修羅場」とかね!)、この6曲、自分の音楽趣味を示すものとしても、自信があります。

1曲目の「天国へようこそ」は、5th(&第1期最終)スタジオアルバム『大発見』収録曲です。ブンチャカなミドルテンポのリズムセクションに、クチュクチュと唸るエフェクトのかかったギター、電子回路の歪む音のように踊る電子鍵盤、下から太い段平めいて突き上げるベースが絡まり、椎名林檎の声が乗る。

東京事変は、R&Bど真ん中として聴くにはやや音を盛っている傾向があり、耳を馴染ませるまで聴き取りきれない印象もあるんですが、うまく馴染ませた後だと個々人の技量の高さがよくわかります。

2. 東京事変. ミラーボール. 2007.

2曲目。この曲の話をする前に、改めて東京事変の現行メンバー紹介をします。5人編成です。

  • 椎名林檎: vo., gt.
  • 亀田誠治: bs.
  • 刄田 綴色: dr.
  • 浮雲(=長岡亮介): gt., cho.
  • 伊澤一葉: kb., gt., cho.

ベースの亀田誠治は、椎名林檎のプロデューサ常連でもありますね。

結成初期には色々入れ替えがあったんですが、この中で東京事変に一つのdistinctivenessをもたらしているのが「浮雲」こと長岡亮介です。長岡亮介といえば、2005年から結成した「ペトロールズ」というブラックミュージックのエッセンスを取り入れたスリーピースバンドのリーダーとしても知られてます。

そして、「東京事変」の浮雲としての始まりは、「ペトロールズ」結成より少し前なんですね。ところで自分、ペトロールズ長岡亮介と、東京事変の浮雲はそれぞれ知ってたんですが、この2つの名義が同一人物であったということを今週やっと知りまして……無知ですみません、いやはや。

その浮雲=長岡亮介が作曲をしているのが、今回リストの2,3曲目「ミラーボール」と「小都民」です。私はアルバム通しでは『娯楽』『大発見』『音楽』の3枚が好きなのですが、今回『娯楽』の中で特にファンキーなのを取り出したらそれがどちらも浮雲作曲だったっていう。長岡亮介の掌の上でした。

3. 東京事変. 某都民. 2007.

事変のメインボーカルは椎名林檎なのですが、この曲は特に浮雲のヴォーカルが前に出て実質ダブルヴォーカルになっています。前のミラーボールよりさらにメロウなアプローチになっています。この曲は特に、柔らかくも甲高い伊澤さんの鍵盤の音色がよいですね。

4. 東京事変. 能動的三分間. 2010.

ちょうど3分00秒で終わってカップ麺の待ち時間に良いということでも知られる曲、これは東京事変において「修羅場」に匹敵するハイテンポなファンクロック曲として聴けます。特にリズムセクションのうち刄田綴色さんのドラムの切れ味が特に良い(亀田さんは後で褒めます

あまりにドラムが良い。良すぎて「ドラム譜 東京事変 能動的三分間」で検索しちゃったよね。自分、ドラム教室に2018-2020の2年間だけ通ったおかげでドラム譜は読めて弾けるようになったので(巧く弾けるとは言ってない)、買って練習したくなっちゃいました。

同じこと考えるドラム好きもYouTuberにいるみたいで、叩いてみた動画がわりとあるみたいですね。いいのが見つかったらブログ版で紹介します。

5. 東京事変. 心. 2012.

5曲目はシングルB面セレクションにあたる『深夜枠』から「心」です。深夜枠はジャケ絵のイラスト「むてきちゃん」も意表をつくものでした。[1]「あき」さんの仕事報告 http://9aki.jugem.jp/?eid=219 (2021-06-25 accessed).

「心」は、亀田誠治のベースの技巧がとてもよくわかるAOR風の曲になっています。亀田さんのベースって、大陸系のドラマに出てくる族の段平くらいに野蛮に斬りつけてくることもできれば、この「心」のように包容力のあるリズムで編んだハンモックみたいに聴こえてくることもあって、変幻自在ですよね。

あとこの「心」のコード進行は、丸サ進行(Just the Two of Us / 丸の内サディスティック進行)そのものではないものの、ビル・ウィザース的なソウルの手癖を感じさせるものですね。実際確認してみたらだいぶ複雑なコードでした。秋ヶ瀬公園の抒情を歌うために必要な馴染みだったのかしら。

6. 東京事変. 毒味. 2021.

6曲目、この特集をやろうとしたきっかけの曲です。東京五輪2020の開閉会式の音楽演出等を担当するはずだった椎名林檎さん、報道でご存知の通り事実上の解体。表に言えないイザコザも沢山封じてミュージシャンとしての本分について考えているだろうと思われた矢先にこれですよ。

統制の済んだ集団が多様性謳うなんてパラドックス
現に今以て右を左を敵対視どうなってんだセンターライン

東京事変. 毒味. 2021.

ここは連日の憲法違反議員の醜悪さを射抜いているように聞こえますし、

どっちもどっちで否両成敗しかし口を塞いじゃうのはずっと
気持ち悪いくどいアンフェア
毒にも薬にもなんない詰まんない

東京事変. 毒味. 2021.

アプローチは違いますが、下の世代でado「うっせぇわ」が支持されるような、発言を無力化されるような閉塞感の椎名林檎からの世間の温度感の表明として聴こえます。

椎名林檎の歌詞って、政治的には巧みにノンポリを堅持するようなところがあると思っていたのですが、『音楽』収録曲の歌詞の傾向はこれまでのそうした達観や諦観の相好が、面白い方向に崩れている(或いは崩してきているのか)と感じさせます。[2]椎名林檎の歌詞について論評が出てた気がするが未読です。もちろんヒップホップ含む広義のR&Bと言ってもよいですが、ファンクはその中でも、ラップ以外の歌ものでやるレイベル・ソングとしての勢いづけの装置としてよく参照されているというのが、率直な実感です。

こんな6曲でした。「椎名林檎も東京事変も好きだけどファンクってよくわからない」という人、「ファンキーな曲は好きだけど東京事変は通ってこなかった」という人、それぞれ今日のプレイリストでそんな文脈をお楽しみください。

今日はこれでおしまい。オンライン読書会いってまいります。来週月曜日はs2e10を通常通りお届けします。来週は特集休むかもな! それではお疲れ様でした。本日の #FalettinSouls プレイリストの感想お待ちしています。

脚注一覧

脚注一覧
1「あき」さんの仕事報告 http://9aki.jugem.jp/?eid=219 (2021-06-25 accessed).
2椎名林檎の歌詞について論評が出てた気がするが未読です。

#FalettinSouls s2e09

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1. Éric Serra and Inva Mula. The Diva Dance. 1997.
2. The Smith. Barbarism Begins At Home. 1985.
3. 本田竹曠. リンズ・ガーデン・ブルース. 1978,
4. 阿川泰子. GRAVY. [1984] 1993.
5. 川崎燎. El Toro – Original Mix. [1976] 2017.
6. RH Factor. Rich Man’s Welfare. 2004.

※参考文献・注釈がまだついていません。今週中にはつけます。(2021-06-21現在)

【2021-06-21 朝】

おはようございます。今日は暑くなりそうですね。週始めの #FalettinSouls 今週もお届けです。

今回はジャズフュージョン系が多いのかな? 長短が極端なものを合わせて30分以内に収めました。
解説、今回こそできない気がするな……ともあれ夕方以降のどこかで。あ、今日はs2e09です。

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夕方です。 #FalettinSouls Season2 episode09 (s2e09) をお届けします。今日は別の文章作業もしたいのでTwitter版は短めに。ではいきましょう。

1. Éric Serra and Inva Mula. The Diva Dance. 1997.

映画『フィフス・エレメント』で歌手が歌うシーンの後半1分半だけを切り出したところの音源です。Éric Serra はリュック・ベッソン映画の、『ニキータ』の頃からの常連サントラ担当の方。

Inva Mula は、ソプラノのオペラ歌手で、この歌の(直前のクラシック風のところを含めて?)80%も生音で歌いこなしたというから驚き。この1分半もほとんど合成だと思ってたよ! トラックは80s〜90sのドンシャリ入りR&Bで、とてもいいですね。そこにオペラヴォーカルが載るから特別に感じる。

2. The Smith. Barbarism Begins At Home. 1985.

2曲めはUKロックバンド、ザ・スミスの2ndアルバムから。基本的な様式はUKロックではあるものの、この曲でAndy Rourke(アンディ・ルーク)が弾いているベースが相当なファンク・スタイルであるということで、紹介したかった。

この辺の、どちらかといえばロック側に属する流派でもファンクサウンドが取り入れられるということは、以前パール・ジャムの音源を紹介した際にも書きましたね。それからこのThe Smithがマンチェスター発バンドであることも重要かも。まーたマンチェスターだよ! どうなってるんだ80sマンチェスター!(マンチェスターとUKファンクの関係については、#FalettinSouls Season2; A Certain Ratio 特集回などを参照のこと)

3. 本田竹曠. リンズ・ガーデン・ブルース. 1978.

本田竹広/本田竹彦/本田竹曠 など幾つかのミュージシャン名を使い分けていたジャズ・ピアニストです。1960s中盤からキャリアをスタートし、2000年代中盤に心不全で亡くなるまで精力的に活動を続けていました。

ジャズ・フュージョングループ「ネイティブ・サン」を結成したのが1978年だそうなので、このいかにもジャズ・フュージョン的(1970s チック・コリア、ハービー・ハンコック、それからウェザー・リポート、国内だとカシオペア・T-SQUAREなど)アプローチはその前後の文脈があるのかもしれない。

4. 阿川泰子. GRAVY. [1984] 1993.

4曲目は女性ジャズ・ヴォーカリストの阿川泰子さん。伸びやかなステキジャズヴォーカル・ナンバー。作曲クレジットにはWritten By Augie Johnson とありますね。

5. 川崎燎. El Toro – Original Mix. [1976] 2017.

2020年に亡くなられたジャズギター界の超大物の、1970s超高速ジャズ・フュージョンから。ギル・エヴァンスと一緒に仕事をしていたそうです。知らなかった……。

私はジャズについては半可通で無知無知の無知なのですが、それでも「このジャズ・フュージョン、ファンキーでかっこいいーッ」という素朴な感想から、ミュージシャン個々人を記憶する為のフックができていくので、この #FalettinSouls でも無知無知の無知状態から語っていくこと上等でやっております。

6. RH Factor. Rich Man’s Welfare. 2004.

6曲目最後は8分クラスの長めのトラックを拾いました。Roy Hargrove (ロイ・ハーグローヴ)をリーダーとする2000年代初頭に結成。この曲は2ndアルバム Strength 収録ですね。

2018年にロイ・ハーグローヴが亡くなってしまったので(今回紹介した曲は物故者が多いな……)、今 The RH Factor がどうなっているか知らないのですが、カッコいい曲を沢山リリースしているので全曲追っかけ直したいですね。

……おっ、準メンバーにピノ・パラディーノがいるじゃん! そうか、ディアンジェロが沈んでる間にピノ・パラディーノはThe RH Factor で(も)活動していたんですね。なるほど、ネオソウル文脈をおっかけるのにもファンキーなジャズは聴いておいて損なしですね。いやーいい収穫だった。

というわけで今回はファンク文脈で仕事している人というよりは、ジャズ(フュージョン)側で楽曲出している側にファンクネスを見出したラインナップになりました。#FalettinSouls 用のストック楽曲で出しそびれているものをたまたま取り出したらこうなりました。小特集感あってよかったよかった。

金曜日の #FalettinSouls s2eX07は椎名林檎の別ブランド「東京事変」で6曲特集、のつもりです。……いま候補が16曲あるけど……どうすんだよこれ……(お、お楽しみに!)

#FalettinSouls s2eX06 特集: ブルース・ブラザーズと1970s末の“保守”ソウル・シーン

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  1. The Blues Brothers. [live] Opening: I Can’t Turn You Loose. (orig: Otis Redding, 1967) 1978.
  2. The Blues Brothers. [cover] Peter Gunn Theme. (orig: Henry Mancini, 1958) 1980.
  3. The Blues Brothers. [live][cover] Green Onions. (orig: Booker T. & The MG’s, 1962) 1980.
  4. The Blues Brothers and Aretha Franklin. [self cover] Think. (direct orig: Aretha Franklin, 1968) 1980.
  5. The Blues Brothers. [live][cover][medley] Do You Love Me?: Mother Popcorn. 1980.
  6. The Blues Brothers. [live][cover] Groove Me. (orig: King Floyd, 1971) 1978.
  7. The Blues Brothers. [live][cover] Jailhouse Rock. (orig: Elvis Presley, 1957) 1978.

おはようございます。大規模接種センターが全国で稼働し始めて、安堵の空気がTL[1]TwitterのTimelineのこと。にも徐々に出始めてきましたね。自分も身近に「接種2回目終わりました」という人がちらほら増えてきて、ほっとしています。さて #FalettinSouls 今週金曜回は「ブルース・ブラザーズ」です。

今日はなんだか疲れてるので、タイトル書き起こしは後で……ブルース・ブラザーズのテーマソングしてるけど実はカバー曲、な1曲目をヘッダにして1+6曲です。というか彼らの演奏する曲はだいたいカバーかゲスト本人の持ち曲だったりするんですが。

「ブルースブラザーズはこういう音源(主にカバー曲)を出した人たちなんですよ、というまとめになってます。#FalettinSouls はファンクとソウルを扱いますが、今回は先週のアレサ・フランクリンに引き続きソウル寄り、そしてブルースロック寄りの特集ですね。ファンクもちょっとだけある。

(コメントに応えて)「Spotifyの-ブルースブラザーズ名義の音源で-権利関係クリアして配信されているもの」にジョン・リー・フッカーが入ってなかったっていうね……(ブルースブラザーズに出た曲特集にするとそれは月曜にやれってことになっちゃうしな)(まあいつかやろう)

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はい、#FalettinSouls ですよ。最近は毎週金曜日に開催し続けられてえらいね〜(自分で言う?)。今晩はブルースブラザーズ特集です。1980年のコメディ映画のあいつらですよ!

プレイリストこちら。1+6曲です。

1. The Blues Brothers. [Live] Opening: I Can’t Turn You Loose. (orig: Otis Redding, 1967) 1978.

極めて短い一曲、ブルース・ブラザーズのシグネチャとして使われることの多い曲ですね。ところでこの曲がカバー曲ってご存知でした? 1967年に亡くなるまで、ソウル音楽史に多大な影響を残したOtis Redding の曲なんです。

オーティス・レディングといえば、思わぬ遺作となった The Dock of the Bay に、先週の特集で触れたアレサ・フランクリンの大ヒットカバー曲”Respect”の原曲者でもあります。この2人の関係はそれだけじゃない。アレサをヒット歌手に導いたメンフィスのスタジオ「スタックス」に2人とも出入りしていた。

スタックス・レコードおよびそのスタジオのバンドは、1960s-1970sのいわゆる「サザンソウル」とのちに呼ばれる一大ジャンルのゆりかごのように大いなる貢献を果たしました。その中に居た実力派バンドに、Booker T. & The MG’s がいたんですね。彼らはオーティスの演奏も務めました。

さて、なんでこんな話をしてるかって? 1980s前後に人気を博したブルース・ブラザーズ・バンドおよび、彼らに当て書きされたコメディ映画『ブルース・ブラザーズ』の主要人物にそのBooker T. & The MG’s が何名も参加してるからですよっ!

ブルース・ブラザーズの象徴であるノッポとフトッチョ(※人気だった時代背景を鑑み、政治的に正しくない言い回しを採用しております)は、それぞれノッポがDan Aykroyd(映画内では弟分エルウッド役)、フトッチョがJohn Belushi(兄貴分ジェイク役)で2人ひと組です。

2人のコメディアンは、1975年から始まる米国NBCの長寿番組 Saturday Night Live の初期に、お笑い枠だけでなく音楽バンド枠でも優れたパフォーマンスを見せました。その人気が、後のマリオとルイージであったり、『MOTHER 2』のトンズラブラザーズなどのオマージュ元になるわけですが……

そのブルース・ブラザーズ・バンドが大所帯となり形を成して行くにあたり、ブッカーT&TheMG’s経由で、1960sサザンソウルの文脈が、入っていったんですね。なんてったって彼ら実際にオーティスとアレサの後ろで演奏してたんですから。

2. The Blues Brothers. [cover] Peter Gunn Theme. (orig: Henry Mancini, 1958) 1980.

これは映画『ブルース・ブラザーズ』内では兄弟の登場シーンで使われていましたね(違ったらすみません、帰って見直せばわかることだが……)。さてこのピーター・ガンって誰? と思いますよね。これは1950s末にドラマ化した私立探偵の主人公の名前です

テレビドラマどころかテレビという媒体それ自体が、(今の私たちの時代からみれば)新興メディアジャンルだったわけですが、このピーター・ガンの音楽は重厚なビッグバンド・ジャズをサウンドトラックとして採用した黎明期の事例としてアメリカ市民の心に残っていたとか【要・更なる出典】。

ブルース・ブラザーズはよくこういう選曲をします。この選曲の文脈は、彼らの時代(1978-1980のあたり)に鳴っていた音楽を考えると、明確です。何が流行っていましたか? そう……ディスコ。それにテクノやヒップホップも産声を挙げ始めていた。

ビートルズ以降のロックの音もあまりしませんね。黒人音楽を真似する中で始まったブルース・ロックの音はします。ブルース・ブラザーズは、ジャズ、ブルース、ソウル、ファンク(映画ではゴスペルもある)など、ブラックミュージック寄りの選曲が多いですが、さらに「1970s前半までの」がつくんです。

ここまで確認したら、根拠ありの状態で言ったと受け入れてもらえるでしょう。『ブルースブラザーズ』は、今見ると20c中盤北米の“懐メロ”リバイバルバンドとして聴けます。が、1978年においてさえ、すでに「ディスコブームに対するカウンターとしてのR&B保守リバイバルバンド」だったと言えるんですね。

そんなにディスコが目の敵になるのナンデ? ディスコリバイバルのDaft Punkとかいいじゃん? と思われるでしょうが、それは音楽評論本一冊ほどの営為が必要になりますので今はスルーします……。

3. The Blues Brothers. [live][cover] Green Onions. (orig: Booker T. & The MG’s, 1962) 1980.

これは原曲が1962年のBooker T. & The MG’s です。かっこいいですねー。でもブルースブラザーズの座組でやるとブルースロック的なニュアンスも加わりますよね。

Booker T. の細かいメンバーの話はブログ版に順延〜【※2021-06-21執筆中……】。あるいは各自で調べてね。

4. The Blues Brothers and Aretha Franklin. [self cover] Think. (direct orig: Aretha Franklin, 1968) 1980.

4曲目は、映画『ブルース・ブラザーズ』にもダイニングレストランの女将役で出演したアレサ・フランクリンの代表曲セルフカバーから。これ、映画本編で流れているアレンジと基本的には同一軸ですが、たぶん完全にイコールな音源ではないね?

シーンとしては、「出獄してきた倫理観崩壊中の兄と、警察を撒くために平気で自動車事故を起こす道徳心破綻中の弟がジェイムズブラウン牧師の天啓を受けてバンドやろうぜと思い立ち、旧友の夫が連れ去られそうになってるので妻兼自営業者として夫にマジギレする、というものです。完全に女将が正しい!

胸元をキチンの油で汚しながら懸命に働く妻をほっぽって夫はよくわからんスーツ兄弟に誘拐されてバンド三昧するとかマジで!? というシーンで、女性の権利についての讃歌としても名高いアレサの曲が凄く……大地に根を張った憤怒の曲としても……刺さりますので、ぜひ映画で文脈をお確かめください。

5. The Blues Brothers. [cover][medley] Do You Love Me?: Mother Popcorn. 1980.

これはThe Contours によるDo You Love Me? (1962) の途中に、なぜかJames Brownのファンク曲 Mother Popcorn (1969) が挟まるという、なんでこうなったの? と思っちゃうナンバー。あまりにややこしいので曲にorig. 表記入れなかったよ。

この変なトラックの塩梅が、しかしいかにも自分が記憶しているブルース・ブラザーズらしさでもある。ファンクやソウルに徹してはいない。70sUKロックの方にもいかない。でも70s冒頭までの米国R&B文脈ならなんでもアラカルトで盛る。演ってみせたらとても巧みに演奏しきってしまう。そういう塩梅ね。

6. The Blues Brothers. [live][cover] Groove Me. (orig: King Floyd, 1971) 1978.

6曲目。King Floyd による1971年のソウルナンバーをカバーしてます。しかし原曲はもっとタポタポとしたのんびり晴れやかな曲なんですが、ブルース・ブラザーズのアレンジは少しニューソウル寄りのバンド演奏になってますね。ハモンドオルガンの色気が大きいかな。

7. The Blues Brothers. [cover] Jailhouse Rock. (orig: Elvis Presley, 1957) 1978.

言わずと知れた Elvis Presley の1957年原曲のカヴァーであり、エルヴィスの主演映画『監獄ロック』の主題歌でもあり、そして……映画『ブルースブラザーズ』をご覧になった方ならわかりますよね? そう、あのシーンで歌われることになる曲です。

この曲を聴いていると、数ヶ月前に日本のロックバンド THE BOWDIES を聴いていた時に使った脳が活性化するんですよね。まだUKからビートルズの流儀が伝播して、ロックの定義が一段地層を積み上げる前の、1950-60sの、”Rock’n Roll rooted by Blues” (ブルースに根を張るロック)の音がする。

どうしてブルースからロックは生まれたのか? ジャズ/ブルース/ゴスペルの要素は、どのようにロック/ソウル/ファンクに継承され展開/転回していったのか? このあたりを考えるのはいつだって面白いのですが……

ブルースブラザーズが取捨選択した歌の数々は、このR&B史における大きめの問題を大きく掴んでると思います。それは彼らのカバー曲の数々もそうだし、そのクライマックスとしての映画作品もそうです。

残念ながら“ふとっちょ兄貴”のジョン・ベルーシは、35周年なお生き生きしている任天堂のマリオと違って1982年に薬物中毒で頓死してしまっているのですが……残る弟役のダン・エイクロイドは『ブルースブラザーズ2000』にも主演で出ています。

「当時のディスコブームに対する米国内からの保守反動」と片付けるにはあまりにも惜しいブルース・ブラザーズ・バンドの選んだ名曲の数々は、星座の配置のように、米国音楽史をみるための特殊な地図のようにもなっています。いまブルースブラザーズを聴く楽しみには、そういう面もあるでしょうね。

ちなみに今回は、R&Bリバイバルバンドとしての扱いであること、そしてTwitterの公開の場で発言することなどにより、映画のネタバレには踏み込みませんでした。一応Filmarksにメモとして所感は書いておきましたので、貼っておきます。

映画『Blues Brothers』(1980)レビュー(Filmarks)
https://filmarks.com/movies/38327/reviews/74590071

今日はこれでおしまいです。……あれっ? s2e09の仕込みが終わってねえ……。月曜の朝までに用意しておきます……。

【いつもの前提解説】#FalettinSouls Season2 は、Twitter上で日本時間の週始め(月曜その他)と週終わり(金曜その他)の週1-2回のゆるっとしたペースでファンクとソウルの文脈を追跡するエクリチュールラジオ番組です。ブログ版ではプレイリストのアーカイヴのほか、補足と注釈のついた増補版もあるのでどうぞご利用ください。

脚注一覧

脚注一覧
1TwitterのTimelineのこと。