#FalettinSouls s2eX04: 匿名ポストパンク・ファンク集団 “Sault” とUK版BLM (Black Lives Matter)

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1. Sault. Up All Night. 2019.
2. Sault. Smile And Go. 2019.
3. Sault. Red Lights. 2019.
4. Sault. Don’t Shoot Guns Down. 2020.
5. Sault. Free. 2020.
6. Sault. Son Shine. 2020.

【2021-06-04 朝】

おはようございます。全国的に爆弾低気圧みたいですが皆さん生きておられますでしょうか。私は湿気でもうだめです。#FalettinSouls 金曜単一ユニット特集回、今日採り上げるのは第4回(s2eX04) 匿名ポストパンクファンク集団Sault(ソー)です。

音源がここ約2年に集中してますね。解説は夜〜。

【夜】

♬♬♬♬♬♬♪♬

一説によれば、特定の携帯だと音符はうんち💩 になるらしいと聴きましたが、最近使っている本編開始の合図はうんちになってたりするんですかね。こんばんは。trickenがお届けするTwitter音楽番組 #FalettinSouls 単一ユニット特集の金曜回をお届けします。近畿は一時的に晴れましたね。

今日は匿名音楽集団 Sault (ソー)をお届けします。とはいえ今週は(本当に忙しかったのと、『聖戦の系譜』[1]『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』(FEシリーズ第4作;任天堂 1996)が2021-05-26 付でNintendo Switch Online … Continue readingにカルチャーショックを受けて忙しかったので)調べる時間が取れてないので、PCで調べながら話していくことにします。2000時まで喫茶店にこもってます。

1. Sault. Up All Night. 2019.

Sault (ソー) 。最初見た時は「ソールト」と読んでしまいましたが、ソーでいいらしい。イギリス(UK)のユニットなんですが、なんと匿名です。今まで出したアルバムは『5』『7』それからタイトルなしの2枚。

名義なしの2枚は『(Black is)』と『(Rise)』という仮タイトルがついていて、それがSpotifyで聴けます。Saultは、アルバムについては、2019年と2020年に出たその4枚がすべてです。1曲めのこれは『5』から。海外の「正」みたいな刻みがアルバム表紙の中央についてますね。

ちょっとDiskUnionの説明読んでみましょうか。

一言では形容できない完全ジャンルレス//グループの存在自体がミステリアス//あまり人にはオススメしないで自分のモノにしておきたい//ESGなど、当時のニューヨークのポスト○○みたいな雰囲気と洗練されたロンドンのACID JAZZを合わせたような

(Disk Union 2020)

次に、英国The Guardian氏のレビューをみましょう:

ESG風のpost-punk funkと80年代初期のboogie funk、そしてneo-soulに近いものの間をジグザグに行き来する特異な道を歩んでいるが、どのカテゴリーにも当てはまることなく、単純なオマージュとして聴こえてくるわけでもない、そんな素晴らしさがある”

(Pendris 2019)[2]Petridis, Alexis. 2019-12-20. Sault: 5 / 7 review – intriguing grooves from a mystery funk machine. https://www.theguardian.com/music/2019/dec/20/sault-5-7-review-forever-living-originals … Continue reading

このPetridisさんの褒め方が本当にぴったりくる。自分は正直、Moonchild系のネオソウル第二世代にはしっくり来るところがあまりないのですが、Saultについてはギリギリ「あ、ネオソウルでしっくり来なかった所を乗り越えて迫ってくるものがある」と思えるんですよね。

いわばネオソウル2.x世代、あるいは2.22世代[3]新劇エヴァ風というか、しかしそれにしてはアフロビート的な刻み・パーカッションの取り入れの仕方がエレガントでもある。英国ソウル内のムーヴメントはかなり錯綜していますが、Saultはさらにその外から何か引っ張ってきてそうな印象さえ受けます。

2. Sault. Smile And Go. 2019.

次いってみましょう。2曲目。『7』から取ってきました。1曲目がニョッキニョッキしたパーカッションの刻みで進行していましたが、これはだいぶヴォーカル要素がハッキリしてますね。Saultの曲の中ではだいぶ聴きやすいと思います。

Saultの個々の曲の特徴は、「短い」ことです。長くても3分くらいで、4分を超えることはめったにない。中には1分以内で終わってしまうトラックさえある。けれど、モチーフの提示としては十分すぎると思えるくらいの長さがそれぞれの曲で確保されてもいます。

FalettinSouls は、「自分がその個々の曲の背景を思って真剣に聴ける1日の下限がそのくらい」と思って6曲で切ってるんですが(そうだったの?)、Saultについてはもう2曲くらい選びたかった気がしないでもありません。なんせ短いので。でも6曲の漏斗のパワーを信じて厳選いたしましたよ。

このSmile And Go の、サビが終わった後のベースがぶいぶい言ってる後の区切りで歌われる「Bidi-Bidi」と聴こえるところが、かわいいですよね。[4]Twitter投稿時は”Bili-Bili” と言ってしまったが、正式にはBidi-Bidiのほうらしい。個人的にはこの曲は「Saultのビリビリ・ソング」と勝手に覚えています。

3. Sault. Red Lights. 2019.

先程のレビュー引用の中で「ESGライクな」と出てましたが、ESGって誰のことでしょうか。ESGは1978年に米国で活動していた、ポストパンク系のファンクバンドと呼ばれているグループで、コアメンバーは女性の姉妹たちでした。

そしてESGは、《Factory》レコードと契約して活動をしたんです。ファクトリーレコード、先週でてきましたね。[5]#FalettinSouls s2eX03: A Certain Ratio: “冷徹なファンク”はなぜマンチェスターからやってきたのかそう、1980sのUKマンチェスターでポストパンク/ニューウェイヴの渦を作ったレーベルです。ESGの形容に「ファンク」だけでなく「ポストパンク」も出るのはその流れもあるわけです。

自分はESGとSaultとA Certain Ratio (そしてファンクバンドではないけれど、The New Order) をまったくべつべつに聴いてきたわけですけど、UKのR&Bシーンを読む際に「ポストパンク」という文脈の一柱が、とても重要なものとしてあるということを、先週から今週にかけて改めて認識しています。

曲の話をあまりできてないですね。Red Lights はいかにもネオソウル(第一世代寄り)ぽいつくりですよね。[6]#FalettinSouls 2021-02-04 Neo Soul, the 1st Gen.言い換えると、星野源が新作シングルのB面にもってきても違和感のなさそうなドラムループをつくってますよね。[7]#FalettinSouls Season1; 2021-01-29 特集:星野源はいかにしてネオソウルをわがものとしたか?同時に現代系ビデオゲームのサントラBGMのようなオシャレさもある。

歌詞も閉塞感を感じさせるもので、歌い方含めてとてもいいです。

毎日が遅く感じるのは
舟に乗り遅れたから
今はどこへゆこうと
赤信号が”

Sault. Red Lights. 2019. 〔引用者による私訳〕

4. Sault. Don’t Shoot Guns Down. 2020.

4曲目です。ここからUntitled2枚の紹介になります。最初に言った通り、Saultは匿名のポストパンク・ファンクバンドでして、誰が演ってるのかとか、誰がプロデューサとして立ち回ってるのか、詳しいことはわかりません。

UKのジャズ・ファンク系の同業者は絶賛していますが、「絶賛してるなら奴じゃないのか」とか推理が行われているらしいほどです。でも唯一確かなことがあります。それは Sault が、総意として、2020年を中心に起きたBlack Lives Matter 運動に対して、支援者の立場で社会参画しているということです。

この曲は “撃つな、その銃口を下げろ (Don’t shoot guns down)” と何度も繰り返し歌っています。それは怒鳴っているようでもあり、懇願しているようでもある。そして最後には “差別野郎の警官が (Racist, Polisman)”と”私は潔白だ(Don’t shoot, I’m innocent)” が被る。この2分に込められた怒り!

撃つな、その銃口を下げろ
差別主義者の警官が
やめてくれ、私は無実だ

Sault. Don’t Shoot Guns Down. 2020. 〔引用者による私訳〕

最後の “Don’t shoot, guns down” & “Racist, policeman!” のところのエフェクト、まるで路地裏でそう叫んだまま撃たれる直前かのような悲愴さが感じられて、本当に切実な話なんだよこれは……と思わされます。#FalettinSouls は、この世界のもう一つの片隅からBLMを支援致します。

このアルバムが出た2020年の末ごろ、BBCのRaido 6 Music が、Saultの 『Untitled (Black is)』を年間ベスト・アルバム1位に選出したそうです(渋谷 2020)[8]渋谷陽一. 2020-12-05. BBCのRadio 6 … Continue reading。注目度の高さが推し量れる記録ですね。

5. Sault. Free. 2020.

「あなたのやり方はきらいじゃないけど、ヒーローはいらないの」と繰り返す歌です。ヒーローぽく振る舞うことによる自己犠牲から自由になってよ、とやんわり指摘しているのかもしれない。この曲はドラムとキーボードの噛合がとても好きですね。

2020年ごろの活動を検索したら、Saultの情報が少し出てきました。

クレオパトラ・ニコリック、ディーン・ジョサイア・カヴァー(別名インフロー)、メリサ・ヤングから成るロンドンの3人組で、それぞれいろいろなミュージシャンの仕事をしてきた

小川充. 2020-12-21

小川2020 [9]小川充. 2020-12-21. Album Reviews: Sault Untitled (Black Is) and Untitled (Rise). Ele-king. http://www.ele-king.net/review/album/007950/ (2021-06-04 accessed).によれば、”ジャイルス・ピーターソン曰く、2020年版のマーヴィン・ゲイの『ホワッツ・ゴーイン・オン』だそうだ。” と、ブリットファンク・リヴァイヴァルの中心人物であるジャイルスからも、この時代のUKソウルを象徴するアルバムとしてUntitled *2 は評価されているらしい。

Sault をほとんど前情報なしに聴き通した時の印象はそれに近いものを確かに感じていましたが、英語圏での評価は想像がついていなかった。BLMは一応北米の運動という括りですが、UKにも多くのアフロ系の人や差別に怯える人が暮らしています。UKからもBLMと紐付いた作品が出て評価されるのは当然か。[10]BLMから観たSaultの評価については、以下がさらに詳しい:高見展. 2021-02-08. … Continue reading

Black is について、Saultは以下のような声明も出しています:

私たちは、黒人として、また黒人の血を引く者として、人生をかけて戦っているこの時を記念して、初の「Untitled」アルバムを発表します。
安らかに、 ジョージ・フロイド。そして警察による残虐行為や制度的人種差別に苦しむすべての人々にも、安息が訪れんことを、願います。私達はひとつだ。

Lizzie Manno / Paste 2020-07-22 [11]Lizzie Manno. 2020-07-22. Sault’s Album-of-the-Year Contender Embodies Black Excellence and Justified Fury: The mysterious U.K. soul group unveiled Untitled (Black Is) last week, which joins RTJ4 … Continue reading

最後の ”We are focused.” は、「私達はひとつだ〔寄り集まって、いま団結している、そのように考えている〕」というくらいの意味合いが濃厚に入っていそうだと思いましたが、もしかしたら直前のRIPの祈りをただただ念じているという意味合いだろうか。訳が確定できませんでした。

6. Sault. Son Shine. 2020.

解説は長めでしたが、Spotifyリストの再生時間としてはあっというまに6曲目といったところでしょう。『Untitled (Rise)』 収録の曲です。こっちのアルバムは怒りや嘆きよりダンサブルな祈りの方が多いですね。手を合わせて祈っているアルバムジャケットだからというだけでもなく。

ここ暫く、この番組ではいわゆるシティポップ系の音源も(R&B文脈を極東において上手に取り入れたシーンのひとつなので)重視していますが、この Son Shine はそういうシティポップ系と共鳴するようなサウンドメイクをしていますね。

おとなしめの、限りなく8ビートの構えに近い16ビートのドラミングの上に、エモーショナルなワウギターと湿ったエレクトリック・ピアノの音、そしてエフェクトの入った女性ヴォーカルの声が載る。歌うのは息子(Son)への愛、そして私達の痛みが決して次世代にとって無駄ではないこと。

なんかもう、オタク的な言い回しでいうと「文脈〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」て感じがね、しませんか。悲しい事件やつらい時事はつづいていますが、この今の時代、私はR&B好きでよかったと思いますよ。人間の崇高さに出会える文化領域のひとつですよ、いまのR&Bは。

Sault 、こんなメッセージ性の強いアルバムを匿名で出しちゃって(一応メンバーはバレてきているようだけど)、この次の作品がどんなものになっていくか、その巧みなクロスオーヴァーぶりも、今の時代に向けて放たれるメッセージについても、とても楽しみですね。今特集すべき音楽集団だと思いました。

これで今日の #FalettinSouls S2eX04 “Sault” 特集はおしまいです。次回は来週月曜 2021-06-07 に s2e07、そして来週金曜2021-06-11の努力目標は……こないだ映画をみてきた「アレサ・フランクリン」ですね! できるかわからないけど、頑張る!

追記:Saultのメンバーについて

この回が終わったあと、小川2020(前掲)の情報をもとに調べておきました。

Cleopatra Nikolic (Cleo Sol) / Vo.:
クレオパトラ・ニコリック(別名クレオ・ソル)。2000年代からキャリアを始めたが一時休止。その後Inflo(後述)と共にキャリアを再開。Sault以外の活動ではソロ名義アルバム Rose in the Dark (2020) もInfloと共作で作っている。基本的にはInfloの自主レーベル Forever Living Originals から作品を出している。[12]Andy Kellman による Allmusic 記事. https://www.allmusic.com/artist/cleo-sol-mn0002448381/biography (2020-06-06 accessed).

Dean Wynton Josiah Cover (Inflo) / Prod. :
ディーン・ウィントン・ジョサイア・カヴァー(別名インフロー)。UKの音楽シーンでは名の知れたプロデューサ・作曲家であり、近年ではMichael Kiwanuka のプロデュースを手掛けたことで知られる。Forever Living Originalsという自主レーベルを持つ。おそらくSaultの曲の大半はこのInfloによって手がけられている可能性が高い【要検証】。[13]良い出典を探してみたが、まとまった情報は作曲情報のみだった。

Melissa Young (Kid Sister) / Vo., MC, Rap :
メリッサ・ヤング(別名キッド・シスター)。イリノイ州シカゴを拠点に活動するMC/ラッパー。[14]ワーナー・ミュージック・ジャパン. nd. https://wmg.jp/kid-sister/profile/ (2021-06-06 accessed).

他にも、Infloの活動を通じて知り合った多くのミュージシャンが参加していることがわかってきているようだが、依然としてその全容は不明のもよう(2021-06-06現在)。

脚注一覧

脚注一覧
1『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』(FEシリーズ第4作;任天堂 1996)が2021-05-26 付でNintendo Switch Online のスーパーファミコン名作コレクションに再録されることに。未験の状態でやったら、新旧のFEと勝手が違って色々驚いていました。
2Petridis, Alexis. 2019-12-20. Sault: 5 / 7 review – intriguing grooves from a mystery funk machine. https://www.theguardian.com/music/2019/dec/20/sault-5-7-review-forever-living-originals (2021-06-04 accessed). ;引用者による訳
3新劇エヴァ風
4Twitter投稿時は”Bili-Bili” と言ってしまったが、正式にはBidi-Bidiのほうらしい。
5#FalettinSouls s2eX03: A Certain Ratio: “冷徹なファンク”はなぜマンチェスターからやってきたのか
6#FalettinSouls 2021-02-04 Neo Soul, the 1st Gen.
7#FalettinSouls Season1; 2021-01-29 特集:星野源はいかにしてネオソウルをわがものとしたか?
8渋谷陽一. 2020-12-05. BBCのRadio 6 MusicがSault(ソー)のアルバムを年間1位に選出した。フリート・フォクシーズやディランをおさえての1位は凄い。明日の番組で最新作を紹介したい。その前にこの曲をチェックして欲しい。. 渋谷陽一の「社長はつらいよ」. https://rockinon.com/blog/shibuya/196839 (2021-06-06 accessed).
9小川充. 2020-12-21. Album Reviews: Sault Untitled (Black Is) and Untitled (Rise). Ele-king. http://www.ele-king.net/review/album/007950/ (2021-06-04 accessed).
10BLMから観たSaultの評価については、以下がさらに詳しい:高見展. 2021-02-08. まるでUKブラック・ミュージックのカレイドスコープ――謎のR&Bユニット、ソーはなぜ、たった2年で早くも伝説となり得たのか? その全貌に迫る!. rockinon.com洋楽ブログ. https://rockinon.com/blog/yogaku/197562 (2021-06-06 accessed).
11Lizzie Manno. 2020-07-22. Sault’s Album-of-the-Year Contender Embodies Black Excellence and Justified Fury: The mysterious U.K. soul group unveiled Untitled (Black Is) last week, which joins RTJ4 as a revolutionary soundtrack to 2020. Paste. https://www.pastemagazine.com/music/sault/sault-untitled-black-is-review/ (2021-06-04 accessed).
12Andy Kellman による Allmusic 記事. https://www.allmusic.com/artist/cleo-sol-mn0002448381/biography (2020-06-06 accessed).
13良い出典を探してみたが、まとまった情報は作曲情報のみだった。
14ワーナー・ミュージック・ジャパン. nd. https://wmg.jp/kid-sister/profile/ (2021-06-06 accessed).

#FalettinSouls s2e06

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1. Jimmy Smith. [Live] Root Down (And Get It). 1972.
2. 相対性理論. ふしぎデカルト. 2009.
3. 流線形. きっとメイって. 2003.
4. James Taylor Quartet. Theme from Starsky & Hunch – Funky People Remix. 1988.
5. Aaron Frazer. Over You. 2021.
6. Shin Sakiura and AAAMYYY. NIGHT RUNNING. 2020.

【2021-05-31 Mon 朝】

おはようございます。こっちの地域は本日快晴。自分は眠いですがまあまあ気持ちの良い朝です。さて今週のはじまりも #FalettinSouls Season2, episode 6 (s2e06) として切り出した6曲をお届けします。

【夜】

FalettinSouls s2e6、寝不足がひどくて今日はまーじで調べが進んでないのであった。ちゃんとした解説明日にしてよい? とりあえず紹介はする……。

1. Jimmy Smith. [Live] Root Down (And Get It). 1972.

1950年代から活躍してたジャズオルガン奏者ジミー・スミスのライヴ音源から。12分ずっとジミーのオルガンを聴いてください。

2. 相対性理論. ふしぎデカルト. 2009.

やくしまるえつこが主体になる前の相対性理論楽曲には、作曲家としての真部脩一固有の音楽がある。Season1で真部さんのプロジェクト「集団行動」[1]Season1; 2021-02-15; Tr.02を遡っていたらテリー・ライスさんにサジェストしてもらいました。

3. 流線形. きっとメイって. 2003.

クニモンド瀧口(Guitar/Leader)、古賀夕紀子(Vo./Fl.)、 押塚岳大(Bass)、中村哲也(Drums)、ミナコ(Keyboards)の組で2001年に始まった、時期を考えるとやや早すぎたかもしれないシティポップリバイバルバンド。今回は2曲目の相対性理論から3曲目のこの曲の流れが好き。

2021年現在は瀧口の1人プロジェクトらしい。最近の動向を調べずに当日になってしまった。

4. James Taylor Quartet. Theme from Starsky & Hunch – Funky People Remix. 1988.

ロック歌手のジェイムズ・テイラーとは関係なく、1985年結成の英国ロチェスター出身の4人組ジャズファンクバンドです。先週金曜にA Certain Ratioの特集したから[2]2021-05-28. s2eX03: A Certain Ratio: “冷徹なファンク”はなぜマンチェスターからやってきたのか.JTQも納得。

しかし1980sロチェスター界隈ほんと面白いな……UKジャズファンクがアシッドジャズに流れ着くまでの中に、自分が今好きな音楽のいろんな核が集まってるのかもなって思います。

ちなみに今回の1曲目のジミー・スミスも、4曲目のJTQもハモンドオルガンがふんだんに使われてます。オルガンファンクだいすき。

5. Aaron Frazer. Over You. 2021.

最新の米国ソウルミュージシャン、アーロン・フレイザーの1stアルバム “Introducing…”から。プロデューサはThe Black Keys の Dan Auerbach です。第二世代ネオソウルの飽和を潜り抜けて出てきた、何か新しい風を感じるソウルですね。

6. Shin Sakiura and AAAMYYY. NIGHT RUNNING. 2020.

私は未見なんですが、triggerの獣人ものアニメ『BNA ビー・エヌ・エー』のEDテーマとしてリリースされた一曲みたいです。昨今のフューチャーファンクぽいセンスで、よくないですか? トラックメイカーのAAAMYYYさんのVo.もいいですね。

今回取り上げたのでは、ジミー・スミスとJTQはいつか単独特集できるかもしれませんね。アーロン・フレイザーはもう少し曲数が出ないとなんとも言えないけど。

あと今回、邦楽側は女性Vo.が重なりましたが、偶然です。それぞれ歌い方のアプローチが違うのにそれぞれファンキーですね。

#FalettinSouls s2eX03: A Certain Ratio: “冷徹なファンク”はなぜマンチェスターからやってきたのか

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1. A Certain Ratio. Nostromo a Go Go. 1986.
2. A Certain Ratio. YoYoGrip (Long). 2020.
3. A Certain Ratio. Backs To The Wall. 1989.
4. A Certain Ratio. Lucinda. 1982.
5. A Certain Ratio. Sounds Like Something Dirty. [1985] 2019.
6. A Certain Ratio. Family. 2020.

【2021-05-28 朝】

おはようございます。今週もよくがんばった(誰に言ってるのか)。ぶじ生きて #FalettinSouls 金曜Extra回をお届けできます。今日の特集は、英国マンチェスターのフリクストン村から始まった音楽グループ “A Certain Ratio”(ア・サートゥン・レシオ)、略称ACRです。

この6曲でお届けします。今朝の今朝まで40曲くらいの候補から厳選してこれ!

解説は夕方以降。ただ昨日今日は連日でオンライン会議・読書会なので今日じゅうに解説コンプできるかわかりません。深夜から明日の午前までには! とりあえずACR音源の感想お待ちしております。単一特集したくなったくらいには、独特のファンクサウンドが集まってますよ。

♬♬♫♬♬♫ ♬♬♫♬♬♫

【同日 夕】

FalettinSouls 金曜単一ユニット特集回 Extra-episode も3回目となりました。今回は1977年の活動開始から40年以上のキャリアを重ねてきた、マンチェスター地域出身の[1] … Continue reading「パンク・ファンク」バンド、A Certain Ratio(ア・サートゥン・レシオ)を特集します。

1. A Certain Ratio. Nostromo a Go Go. 1986.

1曲目は1986年の曲から。A Certain Ratio はJez Kerr, Martin Moscrop, Donald Johnson などを中核メンバーとして、多くの多数メンバーと協業しながら40年以上活動を続けてきました。

さて、このA Certain Ratio (以下ACRと略す)のジャンルはなんでしょうか? 彼らは《Factory》(ファクトリー)という名物レーベルからキャリアを始めました。《Factory》といえば、いわゆる【マッドチェスター・ムーヴメント】とも呼ばれる、ポストパンク/ニューウェーヴの時代を象徴するレーベルです。[2]https://ja.wikipedia.org/wiki/マッドチェスター (2021-05-28 accessed). … Continue reading

《Factory》で名を知られたグループといえば、Joy Division, The New Order ……ほとんど「ポストパンク」の代名詞みたいなバンドですね。ではACRもパンクバンドと呼んじゃっていいのか? しかしパンクロックと聞いて期待される音とは、音の作りがだいぶ違いますよね。

今回私は、ググってACRのジャンルを引いてきました(野田2020,油納2020)。曰く、

  • インダストリアル・ファンク / Industrial Funk
  • モノクローム・ファンク / Monochrome Funk
  • ファンク・ノワール / Funk Noir
  • コールド・ファンク / Cold Funk
  • パンク・ファンク / Punk Funk

なるほど……ACRのどんな部分を表現しようとするかは伝わってきます。

つまるところACRは、1970s末から1980s前半にあって、「ポストパンクの精神と、冷たくてゴリゴリと鋼鉄めいた音色とが自然体で合流したところに具現化した、英国マンチェスター地域から提示されたファンク様式の一つ」[3] … Continue readingを演っているのだ(そしてそれを2020年まで形を変えつつ演り続けているのだ)と、そう思われていそうですね。

自分はこの中では「コールド・ファンク」「ファンク・ノワール」あたりの呼び方がcoolで好きですが、ベタに通じやすそうなのは「パンク・ファンク」「インダストリアル・ファンク」あたりでしょうか。とにかく、王道的なファンク史の手つきでは中々因数分解できなさそうな、そういう手強さがあります。

なんでこんな音ができちゃったんだ? という話を深掘りする前に、さらに実例を聴き進めてゆきましょう。

2. A Certain Ratio. YoYoGrip (Long). 2020.

2曲目はかなり悩んで入れました。というのは、この曲にはまずLong ver. と Short ver. とがあって(括弧付きでLongって書いてますからね)、さらにこれがACRの別の持ち曲2つをセルフリミックスした曲だからです。

一つ目が、Yo-Yo-Gi〔ヨヨギ〕という珍曲です。これはぜひYouTube版のニンジャスレイヤー的映像とともに見ていただきたい。

ツッコミどころは、「タイトルが代々木なのに、収録されたJR東日本の英語アナウンスは新宿の放送じゃん!」というところですね。

そしてもう一つが、2020年の新作アルバム『ACR Loco』収録の「Get A Grip」です。この曲にはBrand New Heavies から Matt Steele が参加しています。(野田2020)

つまり、Yo-Yo-Gi × Get A Grip = YoYoGrip というわけ……。そんな、そんなSoundcloudユーザが曲作りの練習を続けた結果うっかり新規に作っちゃった茶目っ気リミックスみたいな曲、作るか!?

ところがACR曲は、一曲ごとのモチーフの美点が極めて明確なので、そういうブリコラージュが功を奏するんですよね。一発ネタぽいYo-Yo-Giのドープなギター&ベースラインと、後期SlyやP-FUNK的な掘り下げのあるGet A Gripのいいとこ取り。BPMも上方修正されて別の曲になってる。YoYoGripはそういう曲です。

ACRメンバーの「生音バンドなのに、やけに #やってみた 感のあるモチーフ一発録りぽさのある曲」は、わりとあると思います「あ、この人たちはクリエイタである以前に、音をいじるのがめちゃ好きな人たちなんだな」というのが、作品を聴いてるうちに合点が行きました。YoYoGripはその象徴みたいな曲ですね。

3. A Certain Ratio. Backs To The Wall. 1989.

3曲目。インダストリアルはインダストリアルでも、ここらへんは第二期ジャネット・ジャクソンや、[4]Season1; 2020-01-20; Tr:04ワーナー契約解除後の(Gold Experienceなどに代表される)Princeの演っていたファンク[5]Season1; 2020-12-30; Tr.03にだいぶ近いですね。そう思ったので拾い上げました。

「インダストリアルファンク」や「ポストパンクにファンクを取り入れた」[6]“Manchester’s A Certain Ratio put the funk in post-punk.” from: JEFF TERICH. 2020-09-22. MANGLED AND TWISTED: AN INTERVIEW WITH A CERTAIN RATIO. TREBLE. … Continue readingとされるACRが、定説寄りのファンク史の方に近づくと、テクノやインダストリアルの音を取り入れていた当時のファンク(R&B)ミュージシャンの仕事の解像度が上がりますね。パララックスビュー!

4. A Certain Ratio. Lucinda. 1982.

4曲目。これは野田努さんも「ACRの最初の一曲目を薦めるならLucindaでしょう」という主旨のことを仰られていますが(野田 2020)、私もまったくその通り同じ意見です。これを!? 1982年に!? まじかよ!! となります(私はなりました)。

1982年にどうして英国マンチェスターでこんなにゴリゴリのファンク×インダストリアルな音楽が作れたのか、というのは、それ自体が英国ポップ音楽史の大きな論点です。

一つ言えるのは、後に「アシッド・ジャズ」運動につながる程度には、英国のクラブでディスコやファンク、ラテンの音楽が掛かっていた。このへんの事情は『UKジャズダンスヒストリー』という本で部分的に解明されていたりします。[7]マーク“スノウボーイ” コットグローヴ[著] and杉田宏樹[翻訳]. 2009.『UKジャズダンスヒストリー』 K&Bパブリッシャーズ. … Continue readingマンチェスター地域もこの波に乗ってた訳です。

そんなUK流クラブシーン(におけるディスコ・ファンク・ジャズ要素)と同時期に、UKではパンクおよびポストパンク/ニューウェイヴ/インダストリアルの運動が起きていた。そうしたシーンの風を自然体で全部受け切って煮込み料理を作ったら、1982のLucindaになった。これって凄いことじゃないですか?

5. A Certain Ratio. Sounds Like Something Dirty. [1985] 2019.

5曲目。この特集の最初の方で、ACRは最初にポストパンク運動の砦のひとつ《Factory》の元で曲を出していたと言いました。その後、《Rob’s Record》や《Soul Jazz》を経て、今は《Mute》と契約しています。

この Spotify など配信で聴ける Sounds Like Something Dirty は、初出が1985年なのですが、この曲が今配信で聴けるのは、その最新の契約先レーベル《Mute》が次々と再盤をリリースしてくれたからというのがあります。その恩恵で私達はACRのキャリア40年余を追いやすくなっていたんですね。

ところでSoul Jazzレーベルは……これはUKジャズの専門家に話してもらったほうがいい話なのですが……英国にとっては米国の「ジャズ」も「ソウル」も(そして「ファンク」も)、アメリカという“外国”から来た音楽という位置づけなんですよね。

Soul Jazz みたいなネーミングも、英国内で受容されるアメリカの音楽としてのJazzとSoul 2つのジャンルの近さを雄弁に物語っています。そういうSoul JazzがACRを見出し直したことは、ポストパンク/ニューウェイヴの文脈とは別の、UKジャズ・UKソウルの宝として再評価する機運をつくりました。

この Sounds Like Something Dirty は、ACRの曲の中では「もしかしてこれ、ジャズ・フュージョンバンドの曲かな?」と思えてしまうくらいにはエレクトリック・ジャズっぽいアレンジですね。

パンク/ソウル/ディスコ/ファンク/ラテン/テクノ/ジャズ……こうしたジャンルを、自分たちの快楽に資する音づくりのために闊達に追いかけてきたことが伝わってくるACRのアレンジの幅の広さ。これは「ちゃんと出会えてよかった」と感じているところです。

6. A Certain Ratio. Family. 2020.

最後の6曲目は2020年新作アルバムから。Cory Henry の時にも触れましたが、[8]Season2; s2eX02アフロ系の方が参加するグループで(ACRにもいらっしゃいます)、2020年に曲が発表されると、そこにはBlack Lives Matter への応答がクッキリとありますよね。

SlyやFunkadelic的なファンクの取り入れに加え、アフリカンなサウンドやパーカッションを取り入れ、私達(人類)が家族であることを歌う……文脈、そこに文脈があるね……。それでいてACRらしいインダストリアルなリズムもしっかり刻まれている。今聴かれるべき、ACRの新作だと思います。

そんなわけで、A Certain Ratio の6曲でした。今回、30曲近い仮選曲から6曲まで絞り込むのに、悲しみが止まりませんでした。ACRの曲は、「これさえ聴いておけばOK」という感じではないのだけど、「このフレーズカッコいいから1度は聴いて!」と拾っていったら全作品の半分くらいになってしまうんですよ。

パンチラインならぬ「ファンクラインが多すぎる」バンド、それがA Certain Ratioだと実感しました……。今回なんとか6曲選び切りましたが、ACRの曲はアルバム単位・再発ベスト単位で何度も聴き込んでいくことになると思います。ぜひ、みなさんもACRと懇意にしてみてください。いい曲沢山ありますよ。

さてファンク&ソウル文脈紹介番組 #FalettinSouls 、次回は2021-05-31(月) Season2 episode 06 (s2e06) です。普通の6曲選となります。お楽しみに。

▼個人的覚書: kihirohitoサウンドとニューウェーヴのグルーヴについて

今晩(今週末)A Certain Ratio の話をする予定なんだけど、A Certain Ratio は 40年前、New Order 等のいわゆる「マッドチェスター」ムーヴメント(英国マンチェスター発のポストパンク&ニューウェイブ運動)の一翼を担っていたとされるバンドなんですよね。

で、自分は2007年から『護法少女ソワカちゃん』シリーズで色んな音源を発表したさくしゃさん(kihirohito)の曲が好きなんですが、「さくしゃさんの作る楽曲の文脈がファンクど真ん中ではないのに、なんで好きなんだろうな?」とはずっと思っていて。

しかし、1970s末〜1990s前半は、狭義にはポストパンク/ニューウェイヴ/アシッドジャズの各運動があり、大きくみると「ブリットファンク」と呼べる運動があった[9]柳樂光隆. 2021-04-12. ジャイルス・ピーターソンが語る、ブリット・ファンクとUK音楽史のミッシングリンク. … Continue reading……と捉えると、さくしゃさんの曲にはニューウェイヴ経由でUKジャズ・ファンクのビートが多少入ってきてたのかもしれないな、と理解した。

これはACRではなくてkihirohito曲の解釈の話なので、#FalettinSouls の主旨からは若干外れています。ですが、当時すでにファンク&ソウルオタクであった自分が、ポストパンク/ニューウェイヴ的なサウンドの何にかっこよさを感じてきたかということの解像度は、ACRの(自分の視界の中での)発見を通じて、ちょっとだけ上がったように思います。

▼補:今回の主な参考資料

  • 野田努[序文・質問] and 坂本麻里子[質問・通訳]. 2020-09-23. マンチェスター、ポストパンク・ファンクの伝説: ア・サートゥン・レシオ/ジェズ・カー、ロング・インタヴュー. ele-king. http://www.ele-king.net/interviews/007820/ (2021-05-28 accessed).
  • 油納将志[インタビュー・文]. 2020-09-28. 「80年代初頭、僕らはジャズに行った、ラテン音楽に走ったとか叩かれたけど、結果として時代を先取りしていた」ア・サートゥン・レシオ12年ぶりの新作リリース. TURN. http://turntokyo.com/features/a-certain-ratio-interview/ (2021-05-28 accessed).

脚注一覧

脚注一覧
1Wikipedia等では良くフリクストン出身と言われるが、ACRメンバーによればそれは正確な紹介ではないらしい。ウィゼンショウかフリクストンか、はっきりとは断定できないところがある。いずれにせよ、“だいたいマンチェスターあたり”なのは違いない。
2https://ja.wikipedia.org/wiki/マッドチェスター (2021-05-28 accessed). また、2002年の映画『24アワー・パーティ・ピープル』は、《Factory》について、面白おかしい誇張も交えながら、そのレーベルのキャラクターを伝えた映画として良く話題にのぼっている。https://amzn.to/34qkrOh
3筆者なりにまとめた説明。これを仮に定義として活用するとしても、それが「ファンク・ノワール」の説明とするのか、「インダストリアル・ファンク」の説明とするのか、そのあたりは、どうも決着しそうにない。せいぜい「ACRの様式」を説明する足がかりとして使えるくらいか。
4Season1; 2020-01-20; Tr:04
5Season1; 2020-12-30; Tr.03
6“Manchester’s A Certain Ratio put the funk in post-punk.” from: JEFF TERICH. 2020-09-22. MANGLED AND TWISTED: AN INTERVIEW WITH A CERTAIN RATIO. TREBLE. https://www.treblezine.com/a-certain-ratio-interview-mangled-twisted/ (2021-05-28 accessed).
7マーク“スノウボーイ” コットグローヴ[著] and杉田宏樹[翻訳]. 2009.『UKジャズダンスヒストリー』 K&Bパブリッシャーズ. https://www.amazon.co.jp/dp/4902800136
8Season2; s2eX02
9柳樂光隆. 2021-04-12. ジャイルス・ピーターソンが語る、ブリット・ファンクとUK音楽史のミッシングリンク. RollingStone. https://rollingstonejapan.com/articles/detail/35733 (2021-05-28 accessed).